第8回日本中医学会 漢方・中医学の心身治療を検討
2018.10.10
第8回日本中医学会が9月8日、9日、東京都内で開催された。第2回世界中医薬学会連合会心身医学分科会との合同開催。
戴昭宇氏(香港浸会大学中医薬学院主任中医師)による会頭講演『胃腸からみた漢方と中医学の心身医療』では、「脾胃が病むと、百病も続発」という言葉を紹介した。特に情志(精神情動)関連では、IBS(過敏性腸症候群)患者には慢性的に不安とうつ気分を持つ者が多く、統合失調症患者には胃腸症状を随伴する者が多いなど、心身が互いに影響し合っていることを示唆。有益な食物の摂取などによる腸内フローラの改善が、うつ症状の改善、統合失調症の治療効果の向上や副作用の軽減につながるとした。また、瀉心湯による心下痞の治療を例に日中両国における応用を考察したところ、中国側は主に身体症状に着目しているのに対し、日本の漢方診療は不眠、不安、狂躁、夢遊、癇証などの精神・情動異常に対する応用が目立つと方向性の違いを説明。吐き気や下痢、便秘、腹痛、頭痛など、従来身体症状としてみられたものに対しても、心身を共に重視する立場から対応を再検討すべきであり、日中の伝統医学、また、西洋医学との間でも、心身医学はお互いを補完しやすい接点になり得ると呼びかけた。
温崇凱氏(台湾中医臨床医学会理事長)の招待講演では、同氏の20年以上の臨床経験を通じて提唱する、神経伝達刺激作用を原理とし、現代医学の知識に基づいた経穴の選択を行う鍼灸施術「温氏針法」を紹介。刺鍼実技も披露した。
このほかに、招待講演として林展弘氏(台北市中医師公会理事長)の『台湾中医薬の心身医療現状』、黄立中氏(湖南中医薬大学)の『神を持つ者が平安―心理状況の癌治療効果に対する影響の分析』の2題、趙吉平氏(北京中医薬大学)による鍼灸実技講演『心身疾患の鍼灸治療における「内経」〝形神理論〟の応用』、シンポジウム5題などが行われた。




