Q&A『上田がお答えいたします』 電気温灸器による施術は「きゅう施術」として療養費が支給される?
2018.11.10
Q.
艾ではなく電気温灸器を使用した場合でも、「きゅう施術」として療養費は支給されるのでしょうか。
A.
平成22年5月24日付の厚労省保険局長通知では「はり又はきゅうと併せて、施術効果を促進するため、それぞれ、はり又はきゅうの業務の範囲内において人の健康に危害を及ぼすおそれのない電気針、電気温灸器又は電気光線器具を使用した場合は、電療料として1回につき30円を加算する」となっています。灸による施術を行った際に電気温灸器を併用すれば、電療料が加算されるということですね。つまり、電気温灸器の使用は「きゅう施術」の加算メニューに過ぎません。電気温灸器だけを使用した場合は認められないのです。
しかし、平成30年10月1日付の厚労省保険局医療課の事務連絡として発出された疑義解釈資料(Q&A)には「(問20)きゅうについて、もぐさを使用しない場合、療養費の支給は可能か」に対して「(答)もぐさを使用せず、電気温灸器を使用した場合であっても支給して差し支えない」とあります。艾を使わず、電気温灸器を使用しただけでもきゅう施術として療養費を支給してもよいとなっていますね。電気温灸器は電療料30円の加算メニューに過ぎなかったのに、いつから施術料に格上げされたのでしょうか。私は、この事務連絡は誤りであると思います。しかし、国が「よろしい」と言っている以上、これは今後広まっていくことになるでしょう。
健保組合を中心に、患者さんが受けた施術が本当に鍼・灸併用の「2術」なのかを照会して、患者さんから「鍼しかやってもらっていない。お灸は受けていない」といった回答を引き出そうとする適正化方策を取っていますが、電気温灸器の使用だけでも「きゅう施術」となれば、保険者の患者照会に与える影響も出てくるでしょう。鍼灸業界にとっては有利ではありますが、やはり単に事務連絡の誤りであろうと私は見ています。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。