『鍼灸師・柔整師のための痛み学―UPDATE』9 痛覚変調性疼痛とは?
2025.11.12
投稿日:2025.01.22
ブラジルに生まれ、日本で鍼灸師になった大内アルベルト敏雄先生。アルベルト治療院は地元を中心に幅広い世代の患者さんに親しまれています。目標はブラジルで鍼灸の学校を開校すること。プロジェクトを立ち上げ、実現に向け力強く前進しています。
父の転勤で中学1年生の時、ブラジルから来日。スポーツのケガで鍼灸院に通ううち、プロスポーツ選手とも関われる華やかな世界を夢見るようになり、一人日本に残り鍼灸専門学校に入学しました。卒後、腕を磨く中で大きな影響を受けたのはあん摩マッサージ・鍼灸師、柔整師であり、アメリカの大学で学んだカイロプラクティックも得意とする冨金原伸伍先生。弟子入りを願い10年間師の治療院で勤めました。
その間、人間関係で自分が嫌になった時期があったと話すアルベルト先生。師が若い時には摩耶山で100日滝行をしたと知り、5年間続けたころ「自分の幸せに気が付いた」といいます。小学生のころ、同年代の子どもが物乞いをする姿に「ブラジルは素晴らしい国になるはずだが、教育に課題がある」と話した父の言葉が思い出され、現在も経済格差や治安が改善せず、それに伴う精神不安や体調不良に加え、「ストレス社会」で病む人も増える状況に「ブラジルで鍼灸の学校を作りたい」と考えるようになりました。

大内アルベルト敏雄先生
構想しているのは日本と同水準の教育を受けられる学校。ブラジルの鍼灸は、比較的少ない勉強で取得できる民間資格の位置づけにあるところを、知識や技術レベルを引き上げ、教育に恵まれなかった人にも手に職をつける機会を与えたいと考えています。
その一歩として、2017年に「武器から鍼灸プロジェクト」を立ち上げ。コロナ禍をのぞき、年1回現地で鍼灸師のためのセミナーを行い、近年は月1回オンラインセミナーも開催し、基本の確認、症例報告、受講生の治療動画チェックなどを行っています。そのかいあって、受講生の中には学校のスタッフ候補も育ち始めているとか。ほかにも、日本にあるブラジル人学校で鍼灸の啓発をしたり、海外で学校を開いた先生にアドバイスを求めたりと、着実に歩を進めています。

自作した学校の看板。募金箱は応援する友人が作ってくれた

ブラジルの小学校で子どもや地域住民に鍼灸やプロジェクトの説明する

ブラジルでのセミナーの様子。資格は取得できても実技を学ぶ機会がほとんどない
教えるのは日本鍼灸と小児はり。特に小児はりは、刺さず、気持ちよく、衛生を保ちやすいことから「世界で鍼の普及につながる」と希望を持っています。大師流小児はりを学び、発達障がいのお子さんを多くみる中で、身体のつらさを上手に表現できないお子さんを自分が代弁できると実感しています。また、子どもの柔らかい肌に触れるうち、大人の触診や鍼の精度が上がったとも。

大師流小児はり。左から基本のもの、先を尖らせたもの、弱三
学校を開くにあたり、自身が鍼灸で立派に生計を立てて生徒の目標になることも大切と考えているアルベルト先生。2013年に開院したアルベルト治療院にも力を入れ、不妊や赤ちゃんの不調、身体の痛み、緩和ケアと様々な治療をしています。中には外国人の患者さんもちらほら。「鍼灸師は天職。素晴らしい職業だと思っている」と熱を込めて語りました。

看板にとまっているのはブラジルの国鳥「オニオオハシ」

温かい雰囲気の治療室、他に子どものための和室やお年寄り用の低いベッドがある部屋もある

子どもをしっかり診る秘策は自作のおもちゃ。ガレージにみたて車を並べて遊ぶ
大内アルベルト敏雄先生
平成12年早稲田医療専門学校卒、同年はり師・きゅう師免許取得
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