第19回社会鍼灸学研究会 『鍼灸のアイデンティティーを求めて』テーマに

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投稿日:2024.10.31

学術・教育あはき

 第19回社会鍼灸学研究会が10月12日、13日、都内の鍼灸系専門学校とオンラインのハイブリッドで開催された。大会テーマは『鍼灸のアイデンティティーを求めて―日本の伝統医療と鍼灸』。

日本鍼灸は歴史的に弱刺激の治療を追及

社会鍼灸学研究会代表の形井秀一氏

 同研究会代表の形井秀一氏(筑波技術大学名誉教授)は、『日本鍼灸とは何かを考える』と題して講演した。現代の日本で行われている鍼治療は、基本的に『霊枢』における九鍼の機能3種(切開する鍼、刺入する鍼、擦過する鍼)を用いた技術だと説いた。

 鍼が大衆化したのは今から約400年前で、杉山和一により管鍼法が考案されるなど江戸期に「日本鍼灸」として花開いたと説明。具体的には、都市化に伴い日本人の体質が敏感となり、それに合わせる形で刺鍼時の刺激量を少なくする必要が生じ、鍼体が細くなったと推察した。また、鍼体が細くなると切皮時の痛みを最小限に抑えたり、刺入後の刺激をソフトにしたりする操作が不可欠となり、併せて灸でもサイズが小さくなったと述べた。

 明治期以降は西洋近代医学を基礎理論にすることが求められ、戦後に入っては、特に1970年代より中医学に基づく鍼灸と日本古典の鍼灸との共存状態が起こり、現在、臨床の場ではそれらを折衷する鍼灸治療が主に実践されていると解説。鍼法は管鍼法や鍉鍼法へ、灸法は透熱灸から台座灸などへと変化をたどり、「歴史的に弱刺激の治療が追及され続けてきた」と日本鍼灸を振り返った。

「鍼が医療用で、針が縫製用」は近代以降

小曽戸洋氏

 『鍼灸、漢方、東洋医学の名称の意味とその変遷の歴史』がテーマの講演では、東洋医学研究の第一人者とされる小曽戸洋氏(北里大学客員教授)が登壇した。「鍼」という字は、中国後漢時代の学者・許慎が編纂した字書『説文』に「鍼、所以縫也、従金咸声」とあり、古くは「シン」の音とは異なり、「ゲン」と発音された節もあると説明。「針」は中国では「鍼」を簡略した語として書かれ、「十」の部分は「はり」の象形で、「針」の音は「鍼」の音の借用だと述べた上で、「鍼」と「針」は異体同字といえると説いた。

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