『ちょっと、おじゃまします』言葉の壁を越え患者さんの役に立ちたい 東京都品川区<はりきゅうルーム カポス>
2025.04.18
投稿日:2025.01.29
昨年12月20日に、実践美容鍼灸研究会主催によるセイリン本社工場の見学が開催され、西は熊本から東は東京と各地から鍼灸師や鍼灸学生が集まった。同社屋は2023年に移転新設されたもので、現時点でセイリンの国内拠点は7カ所、海外拠点はドイツ、中国、オーストラリアの3カ所となる。
社屋のエントランスはほこりや塵の侵入を少しでも減らすためとの配慮で2重扉に。参加者は感心した様子で門をくぐった。
セイリン本社工場
セミナールームにて同社から会社の沿革や鍼の製造過程の説明が行われた。そののち、服装と髪型のチェック。さらにキャップをかぶり、製造エリアに進む。
案内のもと見学したのはディスポ鍼 J-Sakuraタイプの組み立て・包装工程。使う機材は同社独自のもので一般公開はしていない。製造エリアは鍼が医療用品であるという特性もあり、埃の侵入を防ぐため、気圧を高く設定しているという。さらに衛生を徹底し、人が製品に触れる機会を極力減らすために、95メートル四方の空間に約40台の機械を配置しほぼ全ての工程を機械化。常在する作業員は13人までにとどめ、主に機材トラブルのサインが点灯した時に対処する。機械化を進める一方、鍼のカットや研磨など熟練した職人技が求められる工程もある。円皮鍼のパイオネックスを製造する際には、いったん仕上げた毫鍼をカットするという説明に「小さいのに同じコストがかかっているなんて驚いた」との声があがる。
なじみの鍼の製造現場が見学できるとあり興味しんしん
厳しい衛生管理のもと、製造が進む様子に見入る参加者。機材は企業秘密のため撮影不可
製造の現場のほかに出荷を待つ倉庫の見学も。箱には国内のみならず世界の地名が見受けられた。
倉庫には製品が詰まった箱が天井までびっしり
工場見学の後は質疑の時間がもたれ、代表取締役社長の稲葉巧氏をはじめ、生産部・開発部の社員が耳を傾けた。「刺入の深さは鍼体の長さの 1/3 以上を残すと説明書にはあるが、守らない治療家も見受けられる。教育はしているか?」との問いに、「啓発を心がけ、学校でも話しているが、全員に伝わっていない。これからも責務として学会やイベントで取り組んでいく」と回答。「円皮鍼をどれぐらい貼り続けていいか?」との質問には、「入浴前までに。水にぬれると剥がれやすく、家族やペットの事故につながる可能性がある。貼り替え方を教えて、より効果を出す方法を提案してあげてほしい」とアドバイスした。
他にも「単回鍼の定義とは?」「SDGSの観点からプラスチックの多さが気になるが?」「鍼に使うステンレス合金はどんな金属を配合しているのか?」「鍼灸のシェア拡大のための取り組みは?」など様々な質問が上がった。
鋭い質問にも、丁寧に現状が説明された
主催者の勝元宏亮氏(縁里庵かつもと鍼灸院)による、セイリン鍼の種類当てクイズなども行われた。
わきあいあいとした雰囲気で、自然と会話もはずむ
同日、静岡県静岡市に店を構える小山忠次郎商店の見学も行われた。100年を優に超える歴史あるもぐさの加工販売店で、2014年に建て替えられた現在の建物にも当時の看板や家具、調度品を生かしたノスタルジックな空間になっている。店を営む中で灸の効果をお客さんが報告してくれ嬉しかった話、看板にまつわるエピソードなど、灸と歩んできた店主の小山博さんと妻の澄乃さんの話に、参加者は聞き入った。
店の温かい雰囲気はふたりの人柄があってこそ
かつての店構えを知ることができる
店の主力商品は「切りもぐさ」。定量のもぐさを等間隔に配置し、専用の器具で転がすようにして細く縒っていく。均等な太さの棒状になったもぐさ「つれもぐさ」を和紙で巻き、カットすると切りもぐさが完成する。「和紙で巻く作業は、どうしても女性の柔らかい力でないとうまくいかない」と店主。参加者もつれもぐさを作る工程を体験し、「転がすだけでもぐさがしっかりとくっつくのが面白い」「均等な太さにするのが難しい」など話しながらもぐさづくりを楽しんだ。
お手本をみせる澄乃さん
アドバイスを受けながらもぐさを縒る。見守る参加者も緊張した面持ち
切りもぐさは中(太さ4ミリ)・小(3ミリ)・極小(2ミリ)の3種類
極小の切りもぐさは、手のひらにのせるとこんなに小さい。作るにも技術と手間が必要になる
もぐさ屋ならではのもぐさの楽しみとして、温灸もぐさを煮出した茶もふるまわれた。ヨモギの香りが爽やかな茶に「初めて飲んだ」「ほっこりする」と和やかな空気に包まれた。
静岡県静岡市清水区大内147
静岡県静岡市葵区伝馬町20-5
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