連載『食養生の物語』122 『梅酢のソーダ』
2023.07.25
「梅酢がどこにも売ってなくて……」「出回るのは梅雨が明けてからなので、今は一年中で最もない時期かもね」。先日そんな話を患者さんとしました。梅酢は、いわば梅干を漬けた時の副産物なので、本格的に出回るのは夏の土用を過ぎてからになります。 (さらに…)
連載『食養生の物語』122 『梅酢のソーダ』
連載『食養生の物語』122 『梅酢のソーダ』
2023.07.25
「梅酢がどこにも売ってなくて……」「出回るのは梅雨が明けてからなので、今は一年中で最もない時期かもね」。先日そんな話を患者さんとしました。梅酢は、いわば梅干を漬けた時の副産物なので、本格的に出回るのは夏の土用を過ぎてからになります。 (さらに…)
連載『食養生の物語』121 『菌活のすすめ』
連載『食養生の物語』121 『菌活のすすめ』
2023.06.23
乳酸菌が免疫力を高めると話題になっています。摂取して腸内環境を整えると、インフルエンザなどの感染率が低下すると実験でも明らかになりました。中でも植物性乳酸菌が免疫力を活性化するとも分かってきたようです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』120 『水分補給のコツ』
連載『食養生の物語』120 『水分補給のコツ』
2023.05.25
「出張先で入院してね……」と、久しぶりに来院された患者さんから聞いて驚きました。軽い脳梗塞を起こしたものの、大事には至らなかったそうで胸をなでおろしました。退院時には主治医から、水分摂取の大事さとコーヒーやビールでは水分摂取にならないと念入りに説かれたそうです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』119 『春ごぼうのきんぴら』
連載『食養生の物語』119 『春ごぼうのきんぴら』
2023.04.25
春から初夏に旬を迎える春ごぼう。新ごぼうとも呼ばれ、香りが強く柔らかくてアクが少ないのが特徴です。
食養生では、ごぼうを「一物全体」として丸ごといただきます。近年の研究では、アンチエイジングの味方である抗酸化物質ポリフェノールは皮とその周辺に多いことが分かっています。抗酸化物質の、外敵から身を守り、傷むのを防ぐ働きを考えれば納得です。その点でも、皮を剥いたりアクを抜いたりしない「一物全体」の食べ方は利にかなっているでしょう。 (さらに…)
連載『食養生の物語』118 『イカナゴのくぎ煮』
連載『食養生の物語』118 『イカナゴのくぎ煮』
2023.03.24
暖かくなりイカナゴのくぎ煮を炊く香りがすると、本格的に春になったと感じます。関西の瀬戸内海沿岸地域、神戸・明石・播州地方では、3月に入って新子(しんこ)と呼ばれるイカナゴの稚魚の漁が解禁されると、各家庭で一斉に炊き始めるので町中に醤油の香りが漂います。 (さらに…)
連載『食養生の物語』117 『お雑煮の雑学』
連載『食養生の物語』117 『お雑煮の雑学』
2023.02.24
お雑煮はお正月の人気料理の一つですが、必ずしも食べる時季が限定されているわけではないようです。
お雑煮を大まかに定義するとしたら、お餅を主な具材とする汁物料理というところでしょうか。鶏がらスープをベースとする北海道や、餅に次ぐ具材として出世魚のブリが欠かせない福岡県や高知県、寒い日には鴨肉、春は旬のハマグリを、とお餅以外の要素は地域や季節によって様々です。 (さらに…)
連載『食養生の物語』116 『つながる勝負メシ』
連載『食養生の物語』116 『つながる勝負メシ』
2023.01.25
昨年は、サッカーW杯で盛り上がりました。日本代表選手たちの活躍を支えてきた「勝負メシ」として、試合の前々日の夕食は銀ダラの西京焼き、前日はウナギの蒲焼きが用意されたと話題になりました。 (さらに…)
連載『食養生の物語』115 『おでんのふるさと』
連載『食養生の物語』115 『おでんのふるさと』
2022.12.23
寒い冬の定番料理、おでん。かつては、夜になると街中におでん屋の屋台が並んだ時代もありました。1980年代から冬季限定商品として販売されているコンビニのおでんも冬の風物詩です。兵庫県の播州地方で育った私にとっては、生姜醤油をつけて食べるのが成人するまで当たり前でした。ご当地グルメブームで「姫路おでん」と呼ばれているのを知り、地域特有のものであったと認識を改めたものです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』114 『鍋の菜っ葉』
連載『食養生の物語』114 『鍋の菜っ葉』
2022.11.25
寒い日が続くと、温かいお鍋が食べたくなってきますね。鍋料理はたくさんの食材を一度に食べられるので、効率よく栄養素を摂り入れられるうえに、冷えた体を内側から温め、さらに心まで満たしてくれる気がします。 (さらに…)
連載『食養生の物語』113 『貧乏さんま』
連載『食養生の物語』113 『貧乏さんま』
2022.10.25
食欲の秋を代表する食材の一つ、サンマは9月から11月に旬を迎えます。
「貧乏秋刀魚に福鰯(びんぼうさんまにふくいわし)」という諺があります。サンマは寒流に乗ってやってくるので、豊漁ということは冷夏で、お米や農産物が不作になります。
これに対し、5月から9月が旬の鰯が豊漁だと暖流に勢いがあるため、夏は暑く実り豊かな秋がやってくるといわれています。
ここ数年はサンマの不漁が続き、価格が上昇し続けています。需要と漁獲量の問題だけでなく、海水温の変化がサンマの生息数に影響しているのではと考える説もあるようです。
また、サンマは寿命が1年から2年と短いうえに、神経質でパニックを起こしやすく、ぶつかり合って鱗が剥がれてしまうなど養殖も難しいようです。
とはいえ、サンマにとっては思わぬ評価のされ方で貧乏くじを引かされたといえそうですね。 (さらに…)
連載『食養生の物語』112 『大きな栗の木の下で』
連載『食養生の物語』112 『大きな栗の木の下で』
2022.09.26
食欲の秋といえば「いもくりなんきん」。サツマイモ・栗・南瓜は、九月下旬から旬を迎える食材で、甘みがあり料理にもスイーツにも楽しめるという共通点があります。江戸時代に井原西鶴が著した浮世草子の一節には「とかく女の好むもの、芝居、浄瑠璃、芋蛸南瓜」とありますが、現代ではタコがクリに入れ替わり定着したようです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』111 『おかしな話』
連載『食養生の物語』111 『おかしな話』
2022.08.25
「まさかとは思いますが……」と、夏の後半から口にすることが増えます。特に中高生のお子さんを持つお母さんから「子供の元気がなくて」という相談が続き、多くなっているのです。
「まさかとは思いますが、減塩していませんか?」と質問すると「なぜ分かるんですか?」と返ってくる。ご両親の血圧を尋ねると、正常の範囲内。それでも先々で血圧が高くなるのではと心配で減塩食を心掛けているとか。対してお子さんは、夏休みも学校まで自転車で往復して部活動。大量に発汗し、水分摂取はできても塩分補給が不十分な場合が多いです。そして、本来なら食事で摂るはずの塩分が、減塩食のために補えず、力が入らない無気力な状態になってしまいます。そもそも血圧が正常であれば、減塩は必要ありません。起こるかもしれない未来を不安がるあまり、現在のお子さんが塩不足による無気力になるのでは本末転倒。食事が味気ないというのも不満につながりそうです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』110 『ころがるダイズ』
連載『食養生の物語』110 『ころがるダイズ』
2022.07.25
このところ「大豆ミート」の人気が高まっています。料理に合わせてミンチ状・ブロック状・フィレ状などさまざまな形状から選べるのも人気のようです。以前からヴィーガンやベジタリアンのための代用肉として存在していましたが、ここにきて体や環境にやさしいというイメージが広まったようです。
菜食主義になる理由は、主に宗教・健康・環境の三つです。日本でも仏教に精進料理があるように、菜食をすすめている宗派が少なからず存在します。健康面で大豆ミートは、低カロリー、低コレステロール、高タンパクで食物繊維も豊富です。環境面では地球温暖化対策があります。畜産業などによる温室効果ガス(主に牛のゲップに含まれるメタンガス)の排出は、世界の温室効果ガスの総排出量のうち14%で、全世界の交通手段から排出される量に匹敵するとも言われています。食糧問題としても、世界で生産される穀物の三分の一が家畜のエサになっています。昨今のSDGsの取り組みも、大豆ミートの支持を後押ししているといえるでしょう。 (さらに…)
連載『食養生の物語』109 『今できる、食育』
連載『食養生の物語』109 『今できる、食育』
2022.06.24
天候不順に世界情勢が重なって原材料が高騰し、食料品の値上げが続いています。燃料費や物流コストも上昇し、どこまで値上げが続くか分からない状況です。「困った」と言う人がおられる一方、さほど影響なさそうな人も見受けられます。食品を購入する際に価格を重視する人が前者で、後者はどちらかというと価格よりも中身・品質を重視しているように映ります。原材料表示を見て、余計な添加物が入っていないか、原料は国内産かオーガニックか、などをチェックする習慣の人ほど値上げへの反応が小さいようです。
こうした購買行動も、食を通した教育、すなわち「食育」に通じるのではないでしょうか。食育という言葉が最初に使われたのは明治時代の医師・石塚左玄が記した『化学的食養長寿論』だとされています。左玄は「子どもの教育で一番大事で基礎となるものは食育であり、しっかりとした家訓が重要である」としています。教育の基礎となるのが食育。食事を作ってくれる人に感謝し、「いただきます」「ごちそうさま」と手を合わせ、食事の役割分担をしていくことが躾となり、家訓となっていくのでしょう。 (さらに…)
連載『食養生の物語』108 『食欲との向き合い方』
連載『食養生の物語』108 『食欲との向き合い方』
2022.05.25
本連載も今回でまる九年、第一〇八回を迎えました。一〇八というと人の煩悩の数、大晦日の除夜の鐘の回数としても知られます。人の悩みや苦しみの中でも、健康や寿命に関するものは尽きないでしょう。そこで食を控えることができれば病は遠ざかり、若々しくいられて、さらには……と、良いことづくし。「腹八分目で医者いらず」ということわざは、実は「腹六分目で老いを忘れる、腹四分目で神に近づく」と続きます。ただ、分かっていてもなかなか出来ないのが人間ということでしょう。食べ過ぎからくる生活習慣病が多いのが現実です。
食欲のコントロールに当たって「断食」で胃腸を浄化するのに勝ることはありません。体内に取り入れることを止めれば胃腸は休まり、身体全体で余分なものを排泄しようとします。体臭が強くなることもありますが、デトックスが進んでいる証拠。やがて肌のくすみが消え、透明感が出てきます。また、何よりも体が軽く、心まで晴れ晴れとしてきます。私も何度か経験していますが、思考もクリアになって判断力の高まりも感じられます。イスラム教の「ラマダン」に代表されるように、多くの宗教が教えの中で「祈り」と「断食」を重要なものとして説いています。「腹四分目で神に近づく」のは万国共通の理想の姿なのかもしれませんね。 (さらに…)
連載『食養生の物語』107 『新種より新酒』
連載『食養生の物語』107 『新種より新酒』
2022.04.25
「ボジョレーヌーボー」というワインはご存知でしょう。ヌーボーとは秋に収穫されたもので造られるしぼりたてのワイン。フランスのボジョレー地区で夏に収穫したブドウで醸造された初物のワインで、11月の第3木曜日に全世界で一斉に解禁されます。ワインと同じように日本酒にも「新酒」があります。秋に収穫されたお米で造られたしぼりたてのもので、11月から出荷が始まりますが、解禁日が定められているわけではないようです。また、秋に収穫された米で醸造し、10月から3月の寒い時期に造られ、しぼりたてで火入れをせず「生酒」として春に出荷するお酒も同じく「新酒」。いずれも爽快感のあるフレッシュな味わいが特徴です。
外食が控えられるようになり、新酒を家飲みで楽しむ人が増えているようです。「酒は百薬の長」と言われる通り、お酒を飲むことで血液の循環がよくなり、ストレスの解消にもなり、ちょっとした不調であれば治ってしまうという人もいるでしょう。一方、『徒然草』には「百薬の長とはいえど、万の病は酒よりこそ起これり」とあり、健康を害する万病の元となりえるとも言われます。適量を楽しむことを外れ、量が過ぎてしまうのがいけないと言えそうです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』106 「重宝される塩麹」
連載『食養生の物語』106 「重宝される塩麹」
2022.03.25
コロナ禍で、テイクアウト弁当を目にする機会が増えました。中でも塩麹漬け・塩麹焼き・塩麹唐揚げなど、「塩麹」を使ったメニューが増えているようです。肉や魚を柔らかくしつつ、まろやかな塩味と甘みのつく調味料として重宝されているようです。ここ十年ほどですっかり定番となった塩麹ですが、実は江戸時代の本草書『本朝食鑑』にも記載があるほど調味料としての長い歴史があります。そのルーツは、東北地方の三五八漬けとされており、塩・米麹・米を三・五・八の割合で混ぜて野菜や魚の漬物床としていたものを、米を抜いて塩と米麹と水で発酵させ、調味料として用いるようになっていったようです。 (さらに…)
連載『食養生の物語』105 シンプルで繊細な、湯豆腐
連載『食養生の物語』105 シンプルで繊細な、湯豆腐
2022.02.25
春も近いとはいえ夜は寒く、温かい湯豆腐を味わいたくなりますね。江戸時代に書かれた『豆腐百珍』には「湯やっこ」という、煮る湯に葛湯を使って豆腐が浮き上がってきたところを掬い上げて食べる方法の記述があり、今の湯豆腐の原型と考えられています。
湯豆腐は、土鍋にたっぷり目の水をはって、昆布を敷いて、塩をひとつまみ。湯が沸いてきたところに、豆腐を (さらに…)
連載『食養生の物語』104 御御御付(おみおつけ)の三礎
連載『食養生の物語』104 御御御付(おみおつけ)の三礎
2022.01.25
おすましか、それとも白味噌か――。年が明けてしばらくは「お雑煮」が話題になります。元々、関東では澄まし汁に焼いた切り餅、関西では白味噌仕立てに丸餅が主流。結婚や転勤、人の流動と時代の変遷とともに多様化し、各家庭で異なってきているようです。また、白味噌といえば関西では甘い米味噌ですが、同じ米味噌でも関東では赤い色になり、北陸・東北では辛い赤味噌になるなど、地域によって異なります。中・四国や九州で味噌といえば、米の代わりに麦を原料とした麦麹と大豆からできる麦味噌が中心。また、東海地方だけは大豆を麹にしたものと塩だけで作る豆味噌が有名です。気候や風土によって味噌の種類も様々ですね。
ことわざには「味噌汁一杯三里の力」とあり、一杯飲むだけで三里くらいは平気で歩けるようになるほど、味噌汁は活力の源と考えられてきました。 (さらに…)
連載『食養生の物語』103 共存できる文化に
連載『食養生の物語』103 共存できる文化に
2021.12.24
「いぶりがっこがピンチ!?」。12月の初旬、そんなニュースが目に入ってきました。いぶりがっことは秋田県内陸部を中心とした地方に伝わる、主に大根を燻煙乾燥させてつくる漬物のこと。通常の「たくあん」は大根を天日干しして水分を抜いてから漬け込みますが、降雪の早い山間地では大根を戸外で干すことができないため、室内に吊るして囲炉裏火の熱と煙で燻してから漬け込むようになったのが始まりとされています。ところが今年、食品衛生法が改正され、漬物製造業に保健所の営業許可が必要になったのです。いぶりがっこ生産者の多くは小規模で、農作業小屋で昔ながらの方法で製造されてきました。新たな設備が必要になる上に生産者の高齢化もあり、今年の製造から断念するところが出てきそうというのです。 (さらに…)