日本鍼灸師会の第15回全国大会in静岡 県下の教員ら交えシンポジウム
2019.12.25
―施術者の資質低下に懸念も―
公益社団法人日本鍼灸師会の第15回全国大会が11月23日、24日、静岡県浜松市内で開催された。
シンポジウム『鍼灸の可能性を探る―鍼灸の恩恵をすべての人に』では、同師会の小川卓良会長、仲野弥和監事、中村聡副会長のほか、静岡県下の鍼灸学校関係者として、東海医療学園専門学校、専門学校中央医療健康大学校、専門学校浜松医療学院、常葉大学の4校から教員らが登壇した。
小川氏は、10月末にNHK『クローズアップ現代』が高齢者の多剤服用のリスクを特集し、11月に講談社『フライデー』が100万人以上の患者が服用する帯状疱疹後神経痛治療剤「リリカ」の副作用である眠気やふらつきと、多発する高齢者の事故を関連付けて報じたことを紹介。こうした報道を大々的に行えるようになった事実そのものが、投薬主体の医療からの転換の流れを示しており、そこにどう鍼灸が食い込めるかが鍵となるとした。一方仲野氏は、施術者の激増に伴う資質の低下を指摘。治療体験後のアンケートでも「二度と受けない」という回答が以前より増えているといった厳しい現状のほか、透熱灸の実施率が灸師の中でも2割ほどにとどまる点も問題視した。その背景に、開業施術者はもとより、専門学校教員になるに当たっても、要求される実技の時間数が不足していたことを挙げ、平成30年度から実施されている新カリキュラムの成果への強い期待感を示した。
「試験のための勉強」脱却を
教員らからは、「学生に免許がない在学中にできることにはどうしても限界があるため、卒後も学校付属治療院に所属したり、就職先で出遭った難しい症例を持ち込んで検討できるといった卒後研修制度に力を入れている」「学校教育に理解のある先生の協力の下、無償の実技講習を開いてもらっている」といった取り組みの報告があった。教員から師会役員らに向けた「いま鍼灸教育に不足しているものは何か」との質問には、臨床技術の向上、経営など「国家試験に受かるための勉強からの脱却」が求められたほか、教員ごとに臨床に対する考え方が異なることが無いよう、指導内容の標準化を進めるよう求める声が上がった。
このほか、伊藤和憲氏(明治国際医療大学鍼灸学部長)による『痛みの最新情報』をはじめ一般講座4題、パラリンピック陸上競技日本代表選手の春田純氏による特別講演『私の競技人生』、鍼灸実技講座『実践! 誰にでもできる脉診流経絡治療・実演』(中野正得氏・森ノ宮医療大学非常勤講師)、県民公開講座などが行われた。