鍼灸柔整稲門会『鍼灸柔整臨床スポーツ医学セミナー』
2018.12.10
―各界のトップトレーナーがシンポー
鍼灸柔整稲門会主催の鍼灸柔整臨床スポーツ医学セミナーが10月21日、東京都内で開催された。同会は早稲田大学・大学院OBの治療家による職業校友会。
福林徹氏(有明医療大学特任教授)は基調講演で、『鍼灸・柔整師に望まれるトップスポーツトレーナー像』として、「鍼灸・柔整学の知識はもちろん、競技特性を知り、スポーツ科学領域の基本的知識、スポーツ医学的知識を兼ね備えると共に、帯同ドクターをはじめ、監督、コーチ、フロントやマネジャーとも太いパイプを持たなければならない」と呼びかけた。
その後、第一線で活躍する3人のトレーナーが登壇。シンポジウム形式で講演を行った。
Jリーグのトレーナーなどとして活動する柔整師の久保田武晴氏(くぼたスポーツ接骨院)は、ロシアワールドカップ日本代表への帯同について報告。身長・体重・体脂肪率などはもちろん、心電図や心エコー、血液検査など細かく検査項目を設け、健康や疲労の状態をチェックしながらサポートを行ったとした。一方、監督からは初めての打ち合わせで「選手は海外のリーグで多くのストレスを抱えている。まずリラックスさせることを優先してほしい」と要望があったとも話した。
鍼灸師の廻谷滋氏(筑波大学非常勤講師)は、リオパラリンピックへの帯同について報告。全盲の選手には関節の模型、弱視の選手には自分で画像を拡大できる専用のタブレットを用いて説明するなどの工夫を紹介したほか、FMS(ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン)、SFMA(セレクティブ・ファンクショナル・ムーブメント・アセスメント)などの検査結果を基にサポートを行った結果、パフォーマンスの向上、選手の積極性向上に効果があり、メダル獲得に貢献したと説明。外傷・障害による離脱がなかったことから、予防にも役立つ可能性が示されたとした。
鍼灸マッサージ師の藤原和朗氏(有限会社トライ・ワークス)は、NPO法人『芸術家のくすり箱』の事業で『東京シティ・バレエ団』の公演サポートに携わった経験を紹介。巡回公演に当たり、リハーサル期間からトレーナーチームを設け、メディカルチェック、コンディショニングのワークショップなどを実施したという。「バレエダンサーは体を動かす神経系統や柔軟性は非常に優れている一方、筋力や持久力などフィジカル面のレベルは高くない。F1レーサーが軽自動車を運転しているような印象」と指摘。施術や運動指導によってフィジカル面を補う意義は大きいとした。