『ちょっと、おじゃまします』鍼灸のリピーターを増やすためには最初が肝心 大阪府河内長野市<蓮鍼灸院>
2024.10.15
「技術の引き出しを増やして、患者さんが納得する治療をしたい」と話すのは奥野浩史先生。治療家として講師として、初めての人が鍼灸に目を向け、リピーターになってくれるにはどうすればいいかを模索しながら活動しています。
鍼灸師を志したのは国家資格を取得したかったから。大学2年で参加したオリエント出版社の中国研修で、当時学校で習うことのなかった老中医の瀉血による治療を見たのが転機になりました。
帰国してほどなく刺絡を学び始め、日本刺絡学会にも入会しました。鍼灸学修士課程修了後は関西医療学園専門学校と森ノ宮医療学園専門学校で非常勤講師として勤務。臨床経験を積むため蓮鍼灸院も開業しました。
活動は当時も今も訪問が中心。個人宅に加えエステや社交ダンススクールなどにも出張して美容、心身の不調と幅広い治療をしています。依頼はほとんどが紹介で、卒業校の仲間や異業種交流会など様々な場所での顔の見えるつながりから。
治療は毫鍼が基本。必要に応じ刺絡や吸い玉の治療を説明すると、約8割から希望があるといいます。初回は毫鍼のみだった人も試してみると「楽になった」と喜び定番にしてくれることにやりがいを感じるそう。
刺絡については「血を抜いたり、吐かせたり、と要らないものを出し毒を抜く治療には伝統がある。生活習慣病などに悩まされ、滞りがちな現代人に効果的だと感じる」と話します。
また、刺絡は医師法違反とされた歴史もあり養成校では教えない傾向に対し「理解して使ってもらい、技術を残したい」との思いで、日本刺絡学会では講習会の実行委員長も務めています。
「鍼灸のイメージアップ」を考える必要性を感じているとも力を込める奥野先生。特に鍼が初めての患者さんには、独自の治療にこだわるのでなく「よかった!」と実感できる方法を選ぶのが大切だといいます。そのため養成校ではまず基礎を重視するよう教え、そのうえで選択肢を増やすこともアドバイスします。
さらに初診の注意点とし、腹診をすると「関係のない体の部位を触られた」と不信感を抱かれたり、「治る」という言葉を安易に使うと再発時に「効果が無かった」と言われたりと、説明不足による悪いイメージ拡散リスクから鍼灸と自分を守る必要性も伝えています。
奥野先生はほかにも知人が主催する薬膳のイベントや耳介療法の講習会を手伝うなど、縁を大切にフットワーク軽く活躍中です。
奥野浩史先生
平成20年明治国際医療大学鍼灸学研究科卒、平成17年はり師・きゅう師免許取得 41歳