連載『柔道整復と超音波画像観察装置』143 胸郭出口症候群の一症例
2017.02.25
松本 尚純(筋・骨格画像研究会)
スマートフォンの普及が進むにつれ、過度の操作や長時間にわたる使用などによって、ストレートネックや手の痺れなど、上肢に障害を抱えた患者が増えてきている。今回は、胸郭出口症候群について述べる。
患者は40歳女性。最近、ヨガを習い始めた。手を挙げるようなポーズをとると、途端に左手が痺れるという主訴で来院。左手を少しでも挙げると、痺れ感や知覚異常、冷え感が直ちに発生するという。以前は、このような症状をあまり感じなかったとのことである。左上肢のアドソンテスト陰性、ライトテスト陽性、モーリーテスト陰性、ルーステスト陽性、エデンテスト陽性、アレンテスト測定不能。
徒手検査では斜角筋症候群ではなく過外転症候群が疑われたが、念のため超音波画像観察装置で斜角筋や腕神経叢、鎖骨下動脈、腋窩動脈を描出してみた。
前斜角筋、中斜角筋、腕神経叢、総頸動脈を描出したのが、【画像①】と【画像②】である。烏口突起をランドマークに腋窩動脈を描出したのが【画像③】、腋窩動脈の長軸が【画像④】。肩関節90°外転、外旋位、肘関節90°屈曲位で描出したのが【画像⑤】である。小胸筋により圧迫され、血行が失われているように見える。
このように、患者には視覚的に患部の状況を見せて、治療方針を説明していく必要があると考える。




