連載『柔道整復と超音波画像観察装置』167 肩こり症状の一考察
2019.02.25
松本尚純(筋・骨格画像研究会)
近年ではデスクワークに加え、長時間にわたるスマートフォンなどの操作の影響で肩こり症状を訴える患者が増えている。頚椎は前弯を保てないと、椎間での軽微な捻挫や、僧帽筋や肩甲挙筋などにおける挫傷を繰り返し、筋硬結や疼痛、凝り感といった症状を呈する。また、冬の寒い時期は防寒着やマフラーなどで頚部や肩甲帯などの動きが制限され、寒冷刺激による体熱の放散を防ぐために体表の血管が収縮、自然と骨格筋にも収縮が起こってくる。そのような状況下では、急な体の動作によって軽微な筋損傷が起こることも考えられるだろう。
今回は、右僧帽筋部に肩こり感を訴える42歳男性の患部を描出し、筋の硬度を画像表示できるエラストグラフィーを用いて、患者と共有した。【画像①】は施術前の右僧帽筋及び肩甲挙筋の状態で、ランドマークを第二肋骨にして描出した。表層から僧帽筋、肩甲挙筋、第二肋骨の順に観察できる。【画像②】は同じく施術前の、症状の無い同部位の状態である。エラストグラフィーでは、赤で表示されるものは柔らかく、青で表示されるものは硬い状態を表している。健側である【画像②】は全体のコントラストが均一で赤と緑が多かったのに対し、患側の【画像①】は青と緑と赤が混在する、やや硬度のある状態だった。【画像③】は、僧帽筋と肩甲挙筋のストレッチングをはじめとした運動療法並びに上肢、下肢、体幹の筋力トレーニング約45分間、約30分間のウオーキングを行った後の状態である。青で表示されるエリアが狭まり、硬さがかなり軽減されたことがうかがえたが、患者がなおも肩こり感を訴えたため、右患部に刺鍼。深さは肩甲挙筋までで、鍼通電1Hzで10分間行い、患者の肩こり感が消失した状態が【画像④】である。
エラストグラフィーを使用すれば画像の色によって患部の硬軟を示せるので、エコー画像を読影できない患者にも症状の状態を把握させることができ、改善までのモチベーションの維持にもつながるだろう。




