連載『柔道整復と超音波画像観察装置』160 反復性肩関節脱臼の超音波画像観察
2018.07.25
田中 正樹(筋・骨格画像研究会)
外傷性肩関節脱臼後に、軽い外力でたびたび肩関節の脱臼を起こす状態を反復性肩関節脱臼という。肩関節は極めて軟部組織に依存している関節であり、可動範囲が大きい反面、関節安定性には乏しいものがある。そのため、衝突などの直達外力だけでなく、転倒して肩を打ったり手を地面についたりしても、あるいはラケットを大きく振るような過外転・外旋運動時に何らかの力が加わっても、前方脱臼することがある。若年層の場合、80%程度が再脱臼をするとの報告もある。今回は、反復性肩関節脱臼の超音波画像観察装置(エコー)による観察について報告する。
17歳男性。バドミントンの練習中、ラケットを振りかぶった際にペアとぶつかり、肩関節前方脱臼を起こす。その後、理学療法によって競技復帰していたが、3カ月後に同じ箇所を不全脱臼。以後、不全脱臼を繰り返すようになって来院した。本症例をエコーで観察して反復性肩関節脱臼を解説する。上腕骨頭後面を短軸・長軸で描出すると、健側では滑らかな線状高エコーの骨面を確認できるが【画像①】【画像②】、反復性肩関節脱臼を起こしている場合、いびつに窪んだ骨面画像が描出される【画像③】【画像④】。これをHill‐Sachs損傷といい、脱臼の際、上腕骨頭後方の軟骨が肩甲骨関節前方と衝突し、上腕骨頭の関節面が凹の変形を呈するものである。
(参考文献)
1)一般社団法人日本超音波骨軟組織学会編『運動器の超音波観察法 実技編 プロ-ブ走査を中心に』(2017)
2)皆川洋至編『スポ-ツに役立てる超音波画像診断』(2010)