連載『アロマテラピーをたずねて』101 香りの文化を追い求めて
2018.10.25
『アロマテラピーをたずねて』は、本稿をもって最終回になりました。香りにまつわる話題、芳香植物の揮発成分である精油に関する働きなど、8年以上も関心を持って読んで頂いたことに心より感謝致します。
振り返ってみると、この平成の時代に香りの文化は大きく花を咲かせたと思います。平成2年6月に大阪の鶴見緑地で開催された「国際花と緑の博覧会」、これがきっかけになったのではないでしょうか。展示館のシアターの椅子に香りの出る仕掛けがあったり、香りの付いた新聞が配布されました。このとき私はハーブの審査員を任命され、出展社の植栽を審査しました。当日の朝、某企業の庭園入り口に植えられたラベンダーが根こそぎ引き抜かれる騒動が。ゼラニウムなどのほかのハーブは無事でしたが、一番目につく場所のラベンダーがごっそり無くなっていました。花泥棒です。事件扱いにはなりませんでしたが、ショックでした。花博閉幕後、花苗業者はハーブや香りの植物をどんどん全国で販売するようになっていき、私も次から次にハーブの苗を買ったものです。
最近では、香りをホテルの付加価値にするところも出てきました。東京ドームホテルは平成27年に住友化学とコラボで「エアノート」を開発、“消して香る”という新発想で快適空間を実現し、客室にこもったタバコの匂いを解消しています。各社のCMでもアロマの三文字が枕言葉のように使われる時代になり特に洗剤、柔軟剤、ヘアケア製品などにそれが目立ちます。しかし、子供たちが嗅覚疲労を起こすなど行き過ぎた香りは「スメルハラスメント」だと、某新聞の記事にも指摘がありました。香りは、温度や湿度によっても感じ方が変わります。香りを公共の空間に利用する場合、検知センサーでも付けなければ万人に受入られるのは難しくなります。無理に作ろうとするから、安価な合成化学の香りに行きついてしまうのでしょう。
高くても本物、100%純粋な、人が「心地良い、癒される」と感じる香りを、これからも広めていきたいと、責任と共に感じています。
【連載執筆者】
山本淑子(やまもと・よしこ)
山本淑子ハーブ・アロマアカデミー校長
AEAJ認定アロマテラピープロフェッショナル