『小児はり国際交流セミナー』、海外の鍼灸師とともに小児はりを学ぶ
2025.04.30
小児はり国際交流の会(代表:井上悦子氏)が主催した『小児はり国際交流セミナー』が 4 月 5 日、6 日に森ノ宮医療大学(大阪市住之江区)で開催された。ブラジルやポルトガルから来日した鍼灸師9人も合わせ、2 日間でのべ42人が参加した。
人により肌は違うと理解して治療する
「大師流小児はり」を紹介したのは大内アルベルト・敏雄氏(アルベルト治療院院長)。子どもの頃ブラジルから来日し、生活を通し日本語を学び鍼灸師になったというバックグラウンドを持つ。現在は地域に根差した治療院を営みながら、ブラジルに日本鍼灸を学べる学校をつくる活動にも尽力している。アルベルト氏が「教育格差のため、職が選択できず生活に困っているブラジル人に、鍼灸師という職を紹介して生活の糧にできるようにしたい」と語ると、会場から感嘆の声がもれた。
大師流小児はりに興味を持ったのは、衛生の保ちやすさや、優しい刺激に加え、刺激量が 体系化され教えやすい点にあったという。月齢や部位ごとに鍼具を接触させる圧力や距離、1分あたりの回数、時間などの目安を記した表を示し、参加者の腕に順に鍼を当て刺激量の違いを体験させた。さらに、アトピー性皮膚炎や、かぶれが改善した症例を紹介し「一番大切なのは、体表の声を聞くこと。過緊張や弛緩のある皮膚を探し治療する」とアドバイスした。
また、「子どもだから柔らかい肌をしているとは限らない」とも。気候や水の違いなど様々な要因で肌は変わるため、年齢や性別に固執せず、よく観察し刺激量を見極める重要性を強調した。
「施術部位の特定」や「回復の程度」、「刺激量」などを知るための、大師流特有の腹部打診についても、実技とともに紹介した。
2本の鍼を使い分ける「森の式漢方小児はり」
森野弘高氏(こうたの森はり灸院院長)は、独自に考案した「森の式漢方小児はり」について古典鍼灸理論をもとに四診法で観察し、「流氣鍼®」という手法で治療すると話した。てい鍼を選択した理由は、痛い・怖いというストレスがない上、皮膚の感覚受容器から脊椎を通り、脳にダイレクトに刺激が届けられると解説し、皮膚にアプローチする意義を伝えた。
森の式の大きな特徴は、「経脈を流す」との考えのもと開発した 2 本の鍼を使い分ける点にある。強い殺菌効果を示す銅製の「お母さん鍼®」は陰経を、マイナスの電位を持ち皮膚の修復を早める効果が期待できるアルミ製の「お父さん鍼®」は陽経を流すのに主に用いると教えた。加えて先端を、多くのてい鍼のような丸でなく三角に成形し、「流す」ことにフォーカスした鍼であり、効率的に「気・血・津液」を巡らせると説明した。
講師陣の治療の体験や、講義の内容を実習形式で確認する時間も設けられた。参加者は代わる代わる患者役を務め、打診や脈診の方法を確認したり、道具や手元の様子を画像におさめたりと、国籍を超えた技術の交流に会場は熱を帯びた。
他にも、井上氏による『小児はりの可能性』をテーマにした臨床例を交えての講演や、足立繁久氏(鍼道五経会)による『子どもの体質を理解することが、小児はりを向上させる』と題した講演が行われた。
てい鍼はブラジルにおいて鍼灸の将来を変える
今回 8名の鍼灸師をブラジルやポルトガルから日本に引率してきたバレリオ・リマ氏(KANGENDO 学校長)は閉会の挨拶にて、歴史的につながりの深いブラジルと日本の鍼灸師が信頼関係を築き、交流を深められたことに喜びを伝えた。
なお、バレリオ氏はブラジルで日本伝統鍼灸を伝える学校を運営している。ブラジルで「鍼」といえば、中国鍼灸がポピュラーで、鍼を刺し痛みを伴う治療であるというイメージが定着している中で、同校では日本鍼灸を基本とし、日本人講師も招き授業を行っている。バレリオ氏は、「小児はりは、とても優しく大人も子どもにも使える点や、メンタルへの効き目にも注目し ている。この先 10 年でブラジルで存在感を持つと確信しており、今そのために働いている」と力強く語った。また同セミナーについて「ブラジルでは学べない特別な話題ばかりだった。私は、てい鍼をプロフェッショナルとして取り組んでいるので、様々な道具や方法を知ることができて良かった」と笑顔を見せた。