日本伝統医療看護連携学会 第1回設立記念総会・学術大会 「伝統医療」「看護」の連携へ向け発足
2020.01.24
昨年末、あはき・柔整などの伝統医療と看護の連携を模索し、学術の発展や社会貢献を目指して、『日本伝統医療看護連携学会』(佐竹正延会長)が発足。昨年12月18日には、第1回の総会・学術大会が仙台市青葉区の仙台赤門短期大学で開催された。講演やシンポジウムでは、伝統医療と看護はともに全人的であり親和性が高いということが、異口同音に言及されていた。
―ともに『全人的』で高い親和性―
佐竹会長(仙台赤門短期大学学長)は開会のあいさつで、看護学も医学にならい、実証科学を踏襲しているが、それは方法論としての側面であると指摘。看護することの本来的意義から見れば、看護学では人間を全体的・全人的に把握する傾向があるのは歴然としており、一方、伝統医療もまた「パーツではなく全体」として人間を捉えていると述べ、二つの分野が連携することで相互に利益を与えて学際的な発展を遂げ、ひいては社会福祉にも貢献できるよう願うと語った。
鍼灸師と看護師が担う「在宅」
シンポジウム『医療連携の未来を拓く―融和』は村上理恵氏(なの花訪問看護ステーション仙台訪問看護師/鍼灸りえる院長)、柴田克実氏(晩翠通り治療院院長)、亀井啓氏(亀井接骨鍼灸治療院院長)、佐藤喜根子氏(仙台赤門短期大学教授)が登壇した。村上氏は、在宅療養中の末期癌患者や要介護状態の利用者の便秘や浮腫、痛みなどの症状緩和に対して鍼灸治療を行っていると説明。その際、患者宅にある各事業所の記録などから他職種のケア内容や患者の状況を把握し、自分の施術記録も残すことで情報を共有していると述べた。看護師や利用者の家族に温灸の指導をしたり、指圧のツボの位置をマーキングしたりするなどのアドバイスを行い、看護師とともに症状緩和に取り組むケースもあると解説。治療院では、地域包括支援センターを通じて患者に介護予防教室を紹介するなど、個々に適した社会資源につなげるようにしていると話した。柴田氏は十数年携わってきたリンパ浮腫治療について、治療が受けられる医療機関の情報が入って来ない、施設を見つけても予約が一杯ですぐに治療が受けられない、といった患者の現状を紹介。医療リンパドレナージを行えるのは医師や看護師のほか理学療法士や作業療法士、あマ指師なども含まれるとして、それぞれの立場からリンパ浮腫治療に関わっていくことが望ましいと語った。亀井氏は『疼痛の本質を探る―治療のピットホール』、佐藤氏は『東洋医学と看護の「融和」』をテーマに講演を行った。
ほかに、佐竹会長の学術大会長講演『医学にあるもの、医学にないもの』、矢野忠氏(明治国際医療大学学長)の『東洋医学の再発見―医療連携の可能性』と谷口初美氏(九州大学大学院教授)の『補完代替医療(CAM)と看護ケア』の特別講演2題、『看護・介護の場での小さいゴムボールを使ったリハビリテーションの一考察』(藤井裕文氏・ふじい接骨院院長)など一般口演10題、ポスター発表3題が行われた。