柔整療養費 患者ら、奈良県橿原市を提訴
2018.10.10
―過誤調整による不足額支払い求め―
柔整療養費に係る奈良県橿原市の国民健康保険申請書の「過誤調整」をめぐり、同市に住む患者らが原告となって、本来支給されるべき療養費の不足額の支払いなどを求める訴訟を奈良地裁で提訴した。「過誤調整」は従来、記号番号の記入漏れといった形式上の誤りにのみ実施されてきた実態にあるが、本件では数年前に同じ施術者が行った別の患者の施術で、しかも既に支給済みの療養費について、相殺処理的な控除が行われたと原告側は主張している。
6月11日付の訴状によれば、訴訟の対象となった療養費の請求は、平成29年1月から3月にかけて、橿原市内の複数の施術所において、原告らやその被扶養者が受療した施術に関するもの。これらの施術所は、いずれも全国柔整師協会(全柔協)に支給申請の代行及び療養費の代理受領を委任していた。同市は全柔協に対し、「平成26年度から平成28年度の療養費について、患者・柔整師への文書照会を行ったところ、本来支給すべきではなかった療養費が判明した」と通告。過誤支給分の返戻額を施術者ごとに算出した上で、支払いが決定していた平成29年1月から3月までの施術分の療養費から「過誤調整」の名目で相殺処理を行ったという。
橿原市は全面的に争う構え
一方、被告の同市は9月10日に答弁書を提出。あくまでも手続上または形式的な誤りについてのみ、過誤調整制度を含む療養費審査支払規則に基づき処理しており、指摘された相殺処理的な控除は行っておらず、原告らから請求を受けた療養費は全額支払い済みであると主張。また、代理受領権限を与えた相手は当該施術所の施術管理者であって全柔協ではないとも主張した上で、訴状の内容を否認し、全面的に争う構えをみせた。
9月20日、奈良地裁において行われた口頭弁論では、裁判官から被告に対し、受領委任の仕組みに関する詳しい説明が求められたほか、原告側からは、大阪地裁、高裁における判決(後述)を提出するので参考にしてほしい旨が伝えられた。全柔協は今後、利害関係を持つ原告側の補助参加人として裁判に関わっていく見通し。次回弁論は11月14日を予定している。
大阪市被告の裁判では患者・全柔協勝訴
過誤調整の名目で行われる相殺処理をめぐっては過去に大阪市でも問題となり、平成26年春、今回と同様に患者らが大阪市を相手取り、裁判を起こした。平成28年2月の大阪地裁判決は大阪市に未払い分の支払いを命じ、大阪市は控訴したものの、平成29年3月に大阪高裁が棄却。原告らの勝訴となった(本紙1046号参照)。
この裁判で補助参加人となっていた全柔協の関係者からは、「この判例を踏まえれば、今後同様の裁判で(原告側が)負けることはない」との声も上がっていた。