小児はりで発達障害児を支援 大阪の通所施設に鍼灸師訪問
2018.09.25
―「療育プログラム」として月3回、毎回10人程施術―
「小児はり」で発達障害の児童を支援する動きが広がり始めている。大阪市天王寺区にある児童発達支援事業所『ウキウキさくらんぼ』では、通所児童への療育プログラムとして小児はりを設けている。月に3回、鍼灸師が訪問し、1時間ほど小児はりを行う。施術に訪れているのは、一般社団法人日本小児はり学会の会長・井上悦子氏と、同会所属の上市茂生氏(大有堂鍼灸接骨院院長)。
7月下旬、上市氏が施術するベッド前には、ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症の児童10人程が順番待ちの列を作っていた。施設内でも人気のプログラムになっているという。
同事業所では平成29年2月の開設時から小児はりを取り入れている。何か事業所として特色を出せる療育プログラムはないかと考えていた時、井上氏と知り合い、小児はりを知った。導入当初は、施術効果が分からず事業所スタッフの不安もあったようだが、親御さんから「小児はりを受けた晩はよく眠れる」との声を多く聞き、驚いたという。また、小児はり後の2、3時間は気持ちも落ち着き、作業療法的な訓練にも集中して取り組めている。井上氏は歯車鍼や松葉鍼、上市氏はイチョウ鍼やローラー鍼などを用い、「とにかく気持ちいいと感じる鍼」を実践。体に触れられることを嫌がるという特徴が発達障害児によくみられるが、「今では自らお腹を出して施術を待っている子もいる」と上市氏は話す。当初は月1回、第3土曜のみだったプログラムも、「平日も提供したい」との事業所側の要望で、現在は平日実施も含めて月3回に。井上氏は、「小児はりへの理解も得られ、順調に利用されている。ただ、もともと大阪を中心に関西では、小児はりは庶民に親しまれていた治療法だった。今一度、その普及につながってほしい」と語った。
小児はり研究会も発足させ、医療機関と臨床研究スタート
また両氏は昨年、履正社医療スポーツ専門学校専任教員の桑原理恵氏や森ノ宮医療大学鍼灸学科教授の尾﨑朋文氏とともに、小児はりのエビデンス創出に向け、「小児はり研究会」を立ち上げた。6月より、こども心身医療研究所(冨田和巳所長、大阪市)で出張施術を行うなど、心療小児科の専門医がいる医療機関の協力の下、小児はりの臨床研究を進めている。