連載『織田聡の日本型統合医療“考”』114 鍼灸・柔整の自費化が進む中、混合診療を再考
2019.04.25
鍼灸施術が院内で行われている医療機関が増えてきました。 混合診療になる可能性が危惧されますが、様々な方法で回避されているようです。 医療機関の保険外負担をめぐる通達が平成17年に出ており、それによると「保険医療機関等において患者から求めることができる実費」として、療養の給付と直接関係ないサービスは受付窓口や待合室等にサービス等の内容及び料金について患者さんにとって分かりやすく掲示し、明確かつ懇切に説明した上で同意を確認すれば徴収できる、ということになっています。この同意の確認は、サービスの内容及び料金を明示した文書に患者側の署名をしてもらって行うのですが、毎回ではなく最初の一回だけで良いようです。 許されるサービスとしては、①日常生活に係るサービス(入院中の病衣レンタルやテレビ代、理髪料など。よくテレビカードを買わされますよね)、②文書代(診断書、カルテ開示料などでもお金を取られますね)、③医療行為だけれども治療中の疾病に対するものではないもの(インフルエンザなどの予防接種、しみ取りなどの美容形成的医療行為、ニコチンパッチの処方など)があります。
鍼灸施術をこの通達に照らし合わせると、①か③に当てはまると考えられます。私が知るところでは、材料費として徴収して施術そのものは無償としている医療機関が散見されます。きっちりと掲示をして患者さんからの同意をしっかり取れば問題はなさそうです。
一方、「療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないもの」は混合診療に当たるので注意が必要です。①保険診療の手技料に包括されている材料やサービスに関わる費用(ガーゼ代やインターネット等で取得した診療情報の提供など)、②診療報酬の算定上、回数制限のある検査等を規定回数以上に行った場合の費用、③新薬、新医療機器、保険適用となっていない治療方法等、が挙げられます。鍼灸を医療行為と考えると、同じ傷病に対する施術は混合診療になります。医療機関で連携するためには、美容形成的医療行為に一元化するのも方法の一つかと思います。
鍼灸・柔整の自費化は今後も進んでいきます。医療機関との連携や、院内での施術を医療機関の事務長に周知できれば、鍼灸師、柔整師の活躍の場は増えるでしょう。
さて、来る6月22日、タイのチュラロンコン大学における解剖実習が開催されます。医師、解剖学者、鍼灸師の視点から、実際の人体を観察しながらディスカッションできる無二の場です。今回は弁護士による法律のセミナーも行われます。 お問い合わせは、(一社)健康情報連携機構(http://www.health-info.or.jp/)まで。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。




