森ノ宮医療大学大学院学術セミナー エビデンスは正しく伝わっているか?
2019.03.10
鍼灸治療と機能性表示食品について
森ノ宮医療大学大学院(大阪市住之江区)の第83回学術セミナーが2月5日、同大学で開催された。テーマは『補完代替医療のエビデンスは医療消費者に正しく伝わっているか』。
同大学鍼灸情報センター助教の大川祐世氏は、特定の疾患に対してどんな治療をすべきか、すべきでないかなどを推奨・勧告するCPG(診療ガイドライン)について説明。現在、上腕骨外側上顆炎や顔面神経麻痺、間質性膀胱炎など13の疾患のCPGにおいて鍼灸治療の推奨度が記載されていると述べた。大川氏らは、これらの信頼性やクオリティーは実際にどれほどのものか、また各CPGにおいて鍼灸治療の推奨度は適切に決定されているかを調査。CPG作成の過程でエビデンスの質を評価するシステム「GRADE」と、CPGそのものの質を評価する「AGREEⅡ」を参照したとした。その結果、13のCPGのうちGRADEを参考にして作成されていたものは2つのみで、AGREEⅡによる評価では全体的なCPGの質は必ずしも高いとは言えなかったと解説した。ただ、顔面神経麻痺、慢性頭痛、過敏性腸症候群のCPGでは鍼灸治療が過小評価されており、上腕骨外側上顆炎と間質性膀胱炎のCPGについては最新の情報に基づいていないため改訂が必要であると指摘した。
同センター教授の山下仁氏は、消費者庁のホームページに掲載されている機能性表示食品の臨床試験論文や研究レビュー報告書を精査。機能性に関する科学的根拠の質には臨床研究の方法論的に問題があるものが少なくなく、特に研究レビューは、査読付き学術雑誌では到底認められないレベルであるにもかかわらず「有効性が示唆される」などと結論しているものがあると指摘した。消費者庁による審査の無い届出制で、事業者の責任において機能性が表示されるものだからこそエビデンスの質や表示の適正性が求められると説き、一方で、表示に対する誤認などを防ぐための、国民のヘルスリテラシーを向上させる教育や活動も必要であると述べた。