連載『柔道整復と超音波画像観察装置』171 半月板損傷の陳旧例の超音波観察の一考察
2019.06.25
田中正樹(筋・骨格画像研究会)
半月板は、膝関節の回旋と内外反に加えて、過度の圧迫力がかかると損傷される。半月板損傷の種類は、縦断裂・横断裂・水平断裂・バケツ柄断裂・複合断裂など損傷形態によって多様であり、前十字靭帯損傷を合併していることが多い。半月板断裂は、三角形高エコー像内部の線状低エコーとして観察できる。今回、半月板断裂の陳旧例を観察できたので報告する。
19歳男子、陸上競技の三段跳びの選手。1年前、跳躍練習中にステップ(二歩目)の着地時に右膝に激痛が走る。医科にて、MRI検査で内側半月板断裂と診断された。保存療法により痛みは軽減して可動性も回復したが、競技を再開すると再発。再発と寛解を繰り返しながら、3カ月間競技を続けた。その後、半年間練習を休み、体動時痛も軽快であったので競技に復帰。すると、練習中に痛みは無いが、跳躍練習後に膝を中心に痛みを訴えるようになった。徒手検査では急性な半月板損傷に対する反応は確認できなかったが、軽度ながら前方への関節動揺を認めた。US(超音波画像観察装置)で内側半月板中節の長軸検査を行うと、正常な内側半月板の場合、中央から後方で内側側副靭帯の深部線維と連続して両者がひと塊となった三角形高エコー像を示す。半月板を挟む低エコーは関節軟骨である【画像①】。【画像②】は患部の画像である。半月板中心部の三角形頂点は縦状に断裂され、大腿部・脛骨部・軟骨に接する面もいびつな凹部を確認できる。また、関節軟骨が減少し、半月板の端が骨関節面に接しているように見える。関節裂隙に短軸でエコー走査を行ってみると、正常な半月板は滑らかな線維軟骨が表層から深層に見てとれるが【画像③】、患部の半月板は、外側周縁部(およそ1/3)は正常な像であるものの、中・内部は高エコー部と低エコー部がまだらな像が認められた【画像④】。
今回観察した半月板断裂では、血液が供給される外側周縁部は再生能力があるため正常なエコー像であったが、中・内部は、血液供給がないことと繰り返しの関節可動のストレスによって1年経過していても組織の再生が行われていないことが確認できた。今後も追って経過観察を行う。




