鍼灸文献情報活用セミナー 文献集積、鍼灸史の検証可能に
2019.04.10
「マンパワー不足」協力者募り
『鍼灸文献情報活用セミナー』が3月13日、森ノ宮医療大学(大阪市住之江区)で開催された。主催は、東洋療法研修試験財団平成30年度鍼灸等研究班『医中誌webにない書誌情報を鍼灸文献データベース(JACLiD)に収載するための調査研究(2)』。
同研究の代表研究者、大川祐世氏(森ノ宮医療大学鍼灸情報センター)が講師を務め、JACLiDについて解説した。平成18、19年度の文部科学省委託事業の一環として鈴鹿医療科学大学が開発したデータベースを基盤とし、現在は全日本鍼灸学会が管理するJACLiDは、鍼灸関連学術論文の書誌情報をデータベース化し、臨床・教育・研究に寄与することを目的としたもの(別記)。役割の一つとして「量的機能の充実」を掲げ、鍼灸関連の「灰色文献」、一般の商業出版ルートに乗らない、学術誌に掲載された論文や卒業論文といった情報を集積しており、誰でも自由にウェブ上で検索できる。大川氏は、明治期以降の鍼灸関係文献について確認できる性質上、「国際的な鍼灸の主導権争いも起きている中で、日本鍼灸史の検証を可能にし、歴史の歪曲を防ぐことも重要な役割です」と述べた。
その一方で、こうした「量的機能」と対を成す、「質的機能」の役割にも言及。RCTなど信頼性の高い研究のデータベース化、構造化抄録の作成といった役割が必要だが、マンパワー不足から運営が滞っており、運営に協力してくれる施術者・研究者を募っていると呼びかけた。
このほか、研究に参加する松浦悠人氏、南波利宗氏が登壇し、出版バイアスをはじめとするRisk of Biasについて解説。既存の鍼灸論文においても、「良い結果は海外の学術誌に投稿し、悪い結果は国内での報告に留める」といった傾向がみられることが報告された。また、日常の治療の中でも、例えば投薬中の患者の禁忌を知りたい時に、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営するMindsガイドラインライブラリなどのサイトで診療ガイドラインを確認するといった、インターネットを通じた情報の活用が有効だと勧められた。
鍼灸文献データベース : JACLiD
【URL】http://jaclid.jsam.jp/