Q&A『上田がお答えいたします』 柔整師が「チーム医療」に参画するには?
2019.09.25
Q.
柔整師として地域包括ケアシステムに参画するにはどうすればよいでしょうか。
A.
在宅医療における地域包括ケアシステムは、多職種連携が前提となる「チーム医療」です。そうすると、何といっても彼ら医療スタッフの信頼と医療人としての認知を得ることが先決となります。そのためには、常日頃より医師や他の医療スタッフとの議論のための勉強を怠ってはいけません。さらに、医科学的な学会に積極的に参加して医療関係者の知己を得るのはもちろんのこと、施術の信頼性が高く学術的な理論構築ができる医療人になっていることが、チーム医療に参画するための条件となります。いずれにしても、今後は高齢者の更なる増加に伴って、医療はますますチーム医療へとシフトしていくことと思われます。そうなると、一部の臨床に秀でた柔整師が急性期の外傷に対する施術を行えるのは当然のこととして、他に訪問リハビリ、在宅リハビリの名称にとらわれず医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの医療スタッフとともに医療人として同じ土壌で競い合える能力が自ずと必要とされるようになっていきます。柔整師が生き残れるかどうかは、医師を頂点としたピラミッド体制の下、医療の共通言語で議論、打ち合わせをし、患者さんを治すための一定の方向性を皆と一緒になって見いだせるかどうかにかかってきます。
しかしながら、現在の柔整師は本当に医療人と呼ばれる存在なのでしょうか。昨今では、患者さんの衣服を脱がさずに、服の上からの施術を行う施術所が急増しています。患者さんの皮膚に現れる発赤・熱感・腫脹を見ずして、触れずして、いったい何を施術するというのでしょうか。こんなことでは、いつまで経っても他職種の信頼を得られません。そして、相変わらず介護保険には参入せず、絶滅の可能性が極めて濃厚な療養費にしがみ付いている現状では、チーム医療スタッフとしてお声掛けいただけるわけがありません。
近い将来、高齢者に係る慢性疼痛疾患の膨大な患者数が確実に見込まれているにもかかわらず、地域包括ケアシステムに参画できないのはあまりにも情けないことです。この流れに乗り遅れ、そもそも乗せてもらえないというのであれば、思いのほか早く柔整業界は消え去る運命にあります。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。




