「癌の化学療法による末梢神経障害の症状改善に鍼治療」、英国で報告
2020.01.24
英国BBCによると、「癌の化学療法による末梢神経障害に対して鍼治療を行ったところ神経症状が改善した」との報告があったと報じている。症状が改善した患者の中には、4年にわたり化学療法を受けて足の感覚がほとんど失われていた者がいたが、6回の鍼治療で感覚を取り戻し、「今、何の問題もなく歩くことができる」という。
BBCのニュースサイト(英語)
「癌の化学療法による末梢神経障害の症状改善に鍼治療」、英国で報告
「癌の化学療法による末梢神経障害の症状改善に鍼治療」、英国で報告
2020.01.24
英国BBCによると、「癌の化学療法による末梢神経障害に対して鍼治療を行ったところ神経症状が改善した」との報告があったと報じている。症状が改善した患者の中には、4年にわたり化学療法を受けて足の感覚がほとんど失われていた者がいたが、6回の鍼治療で感覚を取り戻し、「今、何の問題もなく歩くことができる」という。
BBCのニュースサイト(英語)
日本伝統医療看護連携学会 第1回設立記念総会・学術大会 「伝統医療」「看護」の連携へ向け発足
日本伝統医療看護連携学会 第1回設立記念総会・学術大会 「伝統医療」「看護」の連携へ向け発足
2020.01.24
昨年末、あはき・柔整などの伝統医療と看護の連携を模索し、学術の発展や社会貢献を目指して、『日本伝統医療看護連携学会』(佐竹正延会長)が発足。昨年12月18日には、第1回の総会・学術大会が仙台市青葉区の仙台赤門短期大学で開催された。講演やシンポジウムでは、伝統医療と看護はともに全人的であり親和性が高いということが、異口同音に言及されていた。
―ともに『全人的』で高い親和性―
佐竹会長(仙台赤門短期大学学長)は開会のあいさつで、看護学も医学にならい、実証科学を踏襲しているが、それは方法論としての側面であると指摘。看護することの本来的意義から見れば、看護学では人間を全体的・全人的に把握する傾向があるのは歴然としており、一方、伝統医療もまた「パーツではなく全体」として人間を捉えていると述べ、二つの分野が連携することで相互に利益を与えて学際的な発展を遂げ、ひいては社会福祉にも貢献できるよう願うと語った。
鍼灸師と看護師が担う「在宅」
シンポジウム『医療連携の未来を拓く―融和』は村上理恵氏(なの花訪問看護ステーション仙台訪問看護師/鍼灸りえる院長)、柴田克実氏(晩翠通り治療院院長)、亀井啓氏(亀井接骨鍼灸治療院院長)、佐藤喜根子氏(仙台赤門短期大学教授)が登壇した。村上氏は、在宅療養中の末期癌患者や要介護状態の利用者の便秘や浮腫、痛みなどの症状緩和に対して鍼灸治療を行っていると説明。その際、患者宅にある各事業所の記録などから他職種のケア内容や患者の状況を把握し、自分の施術記録も残すことで情報を共有していると述べた。看護師や利用者の家族に温灸の指導をしたり、指圧のツボの位置をマーキングしたりするなどのアドバイスを行い、看護師とともに症状緩和に取り組むケースもあると解説。治療院では、地域包括支援センターを通じて患者に介護予防教室を紹介するなど、個々に適した社会資源につなげるようにしていると話した。柴田氏は十数年携わってきたリンパ浮腫治療について、治療が受けられる医療機関の情報が入って来ない、施設を見つけても予約が一杯ですぐに治療が受けられない、といった患者の現状を紹介。医療リンパドレナージを行えるのは医師や看護師のほか理学療法士や作業療法士、あマ指師なども含まれるとして、それぞれの立場からリンパ浮腫治療に関わっていくことが望ましいと語った。亀井氏は『疼痛の本質を探る―治療のピットホール』、佐藤氏は『東洋医学と看護の「融和」』をテーマに講演を行った。
ほかに、佐竹会長の学術大会長講演『医学にあるもの、医学にないもの』、矢野忠氏(明治国際医療大学学長)の『東洋医学の再発見―医療連携の可能性』と谷口初美氏(九州大学大学院教授)の『補完代替医療(CAM)と看護ケア』の特別講演2題、『看護・介護の場での小さいゴムボールを使ったリハビリテーションの一考察』(藤井裕文氏・ふじい接骨院院長)など一般口演10題、ポスター発表3題が行われた。
『医療は国民のために』287 広告ガイドラインの周知徹底は社団らが他団体と連携できるかがカギ!
『医療は国民のために』287 広告ガイドラインの周知徹底は社団らが他団体と連携できるかがカギ!
2020.01.24
「あはき師及び柔整師等の広告に関する検討会」の開催も既に8回を数え、広告適正化に向けた指導等の指針となる「ガイドライン案」も厚労省から提示され、ようやくまとまりつつあるようだ。今回は、施術者の多くがその行方に着目している、ホームページの規制に関する取り扱いに触れてみたい。
ご存じの通り、今やインターネット上での情報発信は、最も効果的な広告戦略といえる。しかも、ホームページの情報は、患者が自分で情報を求めて検索すると位置付けられており、「広告の定義」の3要素の一つである「認知性」に触れない。すなわち、単なる情報提供とみなされるので、法令上は「広告に当たらない」と整理できる。よって、あはき・柔整の施術所を広告規制の対象にするにも、法律改正を行わなければ、施術所のウェブサイト等は広告に該当しない。しかし、広告検討会では、医科の取り扱いと同様にウェブサイト等の表示内容にも切り込んでいかなければならないのは、言うまでもない。そこで、規制の対象外としつつも、法改正が行われるまでの当分の間(3年後となるか、5年となるか?)、「業界内の関係団体による自主的な取組みを促す」という形で、ガイドライン上で仕切ろうとしている。厚労省としてもこうするほか無いのであろう。
私が注目したいのは、昨年11月14日の第8回検討会の議論で、出席した構成員の一人が「関係団体等とは、どこを指しているのか。今日来ている団体を指しているのか?」と質問したところ、事務局を務める厚労省医政局が「“業界全体”でまず自主的な取り組みを行ってほしい」と回答した点だ。
現在、検討会に構成員を出している施術者団体は「日本柔道整復師会・日本鍼灸師会・全日本鍼灸マッサージ師会・日本視覚障害者団体連合」のわずか4団体である。ここは、それら以外の団体にも幅広く働きかけ、実効性の伴う自主的な取り組みをしていかねば、とてもではないがガイドラインの周知などできない。今後、これらの4団体は「我々はきちんと取り組んでいるが、他団体が何もやらないし、やってくれない」と主張するのではなく、むしろ率先して他団体に働きかけていくことが求められるし、厚労省もそれを期待しているのではなかろうか。もしそうでなければ、先の質問に対し、厚労省は「関係団体とは本日、検討会に出席しておられる皆さんの団体です」と即答できたはずである。
またガイドライン案では、無資格者(非医業類似行為?)に関しても、「関係団体等による自主的な取組みを促す」と示されており、検討会に出席の4団体が、他団体との調整や団体に属さない者への対応という点で重要になってくるのは間違いない。相も変わらず、「他の団体や個人施術者のことなど知ったことではない。何か言いたいなら社団会員になればいい」との考えのままであれば、業界全体への周知徹底など全く期待できない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
『鍼灸5G』 鍼灸学生がイベントを開催
『鍼灸5G』 鍼灸学生がイベントを開催
2020.01.24
―津田昌樹氏、建部陽嗣氏が参画―
昨年12月21日、大阪市東成区の森ノ宮医療学園専門学校で「鍼灸5G」が開催された。
鍼灸学生を中心としたイベントで、「5G」は「学生の、学生による、学生のための、学術が好きになる学会」の略。発起人は大阪行岡医療専門学校長柄校鍼灸科3年の岸井広樹さんで、アドバイザー・座長に鍼灸業界向けウェブマガジン『ハリトヒト。』代表の津田昌樹氏と『閃く経絡』の翻訳者・建部陽嗣氏を招聘。学生、鍼灸師、業界関係者ら約50名が参加した。
前半は学生による研究発表、後半は学生、鍼灸師に加え、商品・サービス等を出展していた企業関係者らも交えたディスカッションを行った。研究発表は岸井さんの『耳鍼の痩身効果について』と、もう1名の学生による『皮膚刺激が人体に与える影響』の2題で、前者はマグレイン(チタン粒)と偽鍼(セイリンのパイオネックス)を使用して耳ツボの痩身効果を検証、後者は皮膚刺激に関する文献を集めてまとめたもの。耳ツボ効果の検証において、体重の減少に関してはマグレインと偽鍼で大きな違いは無かったものの、体脂肪率はマグレインの群で有意に低下しており、津田氏はこの点が「面白い」と指摘。「ではなぜそうなったのか?」との疑問を立てて次の研究につなげてほしいと述べ、フロアから「VASとは何か?」との質問があった際には、学生のうちから学術用語に触れ、その意味を知ってもらいたいと呼び掛けた。文献研究については演者が発表したのち、建部氏がそのスライドをアレンジしたものを披露。研究テーマのイメージに合ったフォントや色、背景を使う、キーワードの文字サイズを大きくする、参考文献はタイトルだけでなく表紙も使う、といった「魅せる」作り方をレクチャーした。ディスカッションでは「流派や団体が多すぎて業界の全体像が分からない」「横のつながりも縦のつながりもない」といった意見を上げた学生や、他校生と話してみて初めて「養成校の実技教育の質・量にバラつきがあること」が分かり、「卒後のスタートラインで既に経験値に差がある」と指摘した学生もいた。
岸井さんは『ハリトヒト。』の書籍化第2弾のクラウドファンディングのリターンとして津田氏の「講演権」を取得。これを契機に、学生が「主役」に、鍼灸師が「参加者」となって互いにコミュニケーションが取れ、また学生は他校生とも交流できるイベントを目指して今回の催しを企画したという。
連載『先人に学ぶ柔道整復』十九 アンブロアズ・パレ(後編)
連載『先人に学ぶ柔道整復』十九 アンブロアズ・パレ(後編)
2020.01.24
―日本で浸透した「肩関節脱臼の整復法」―
パレが生涯書きためた論文を「パレ全集」として出版したのは、晩年の1575年でした。これが伝わった当時の日本はキリシタン禁制が敷かれていて、スペインやポルトガルは追放され、キリスト教布教を目的としないオランダのみが長崎への出入りを許されていました。オランダ語に翻訳された全集を、まず日本の通詞(通訳)たちが、同書に関するオランダ人外科医の解説を聞き、外科絵図を見つつ抄訳。これが日本で最初の西洋臨床医学書となっていきました。
パレの日本での影響を示す上で注目したいのが、全集の挿図として描かれていた「肩関節脱臼整復で使用されている棒」(図1)です。立った患者の脇に差し入れた「曲がった形の棒」。当時西洋で使われていた天秤棒で、特別な医療器具ではありませんが、整復時には棒を上下逆さに使用していました。腋窩に触れる部分に丸い球を付けたのはパレ独自の工夫ですが、実は図1の下部にある棒の詳細な形状を示すスケッチは、日本に渡ってきた当時の全集には見られませんでした。
さて、1735年に全集を翻訳した西玄哲による『金瘡跌撲療治之書』では、この「曲がった棒」を用いた整復法が描かれています。パレの挿図と比較すると簡略化されていますが、人物の配置からパレ由来であると分かります。次に、1767年に刊行された『外科訓蒙図彙』(伊良子光顕)では、人物の頭髪は西洋風なのに、服装が中国風。ただ、この挿図でも「曲がった棒」が使用されています。
少し時代を下って、日本を代表する外科医の一人、吉雄耕牛の場合です。耕牛が弟子に与えた免許皆伝書(1790年)の中に、パレの脱臼整復法が載っています。西洋風の人物たちが「曲がった棒」を使い、治療する類似の絵が描かれています。
華岡青洲にも、弟子らの筆記した華岡流整骨術の絵図の中に、脱臼整復法を伝えるものが残っています。二人の助手が患者の腋窩に棒を入れ、担ぎ上げ、術者が腕を引っ張りながら整復しています。青洲の使用した棒は「まっすぐ」ですが、患者の膝を曲げ、これを縛れば、背の低い助手でも患者を吊り上げられます。これは青洲の工夫です。ここまで肩関節脱臼の整復図にスポットを当てて見てきましたが、パレの挿図が少しずつ変形していたのが分かります。
その後、耕牛の弟子である二宮彦可が『正骨範』を著するなど、日本独自の整骨術が花開きますが、江戸期に日本文化に同化していったパレの整復法が、起点になっていたのは言うまでもありません。
【連載執筆者】
湯浅有希子(ゆあさ・ゆきこ)
帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科助教
柔整師
帝京医学技術専門学校(現帝京短期大学)を卒業し、大同病院で勤務。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程を修了(博士、スポーツ科学)。柔道整復史や武道論などを研究対象としている。
来年度の施術管理者研修、日程決まる 2月より受講申込み開始
来年度の施術管理者研修、日程決まる 2月より受講申込み開始
2020.01.24
―「先着順での受講」は変更―
接骨院・整骨院で柔整療養費の受領委任を取り扱う上で、2年前より義務化された「施術管理者研修」の令和2年度の開催日程が決まった。4月中旬の東京開催を皮切りに、全国で全22回開催される。2月3日より受講の申込み受付がスタートするが、これまでの「先着順」は変更される予定としており、詳細はまだ発表されていない。
研修を主催する公益財団法人柔道整復研修試験財団(福島統代表理事)が昨年末、開催日程をホームページ上で公表した。全22回のうち、東京・大阪など都市部を中心に開催されるのは今年度と変わりないが、1会場当たりの募集定員は増え、「定員300名」とする会場が6つもある。全体の募集定員は5,550名で、今年度の5,375名から175名増員された。
維新・藤田議員、先着順に指摘
受講者決定は「優先度」で?
来年度の研修からは、「申込み方法」に大きな変更が加えられる。今年度まで「受講者を申込み先着順で決定」していたが、その点を変更する予定としている(1月22日現在、変更内容は発表されていない)。
背景には、研修受講の申込み時刻になるや否や予約が殺到し、すぐさま定員オーバーになるという問題が、一昨年度(平成30年度)の制度導入以降続いている実態がある。これに伴って、開業を近々予定していた柔整師が研修を受講できず、開業を見送るケースも生じている。本紙では平成30年12月以降、複数回にわたって問題を指摘してきたが、昨年11月には日本維新の会の藤田文武衆院議員が厚生労働委員会で同様の指摘を国会質問した。藤田議員は、「これ(研修)は総量規制ではない。希望する者が速やかに受講し、資質を上げることが本来の研修の趣旨のはずだ。申込み方法等を工夫してもらいたい」と発言。同じ厚労省所管の「児童発達支援管理者」の例(経過措置として、まず管理者になることができ、その証明を出せば優先的に研修を受講できる)も挙げて、対策を促した。
なお、厚労省より、1月15日付の事務連絡が柔道整復研修試験財団宛てに発出されており、「優先度の高さなどを考慮して受講者を決定する仕組みに変更することを検討願いたい」と書面で伝えている。
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』131 新型コロナウイルス
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』131 新型コロナウイルス
2020.01.24
昨年末から、新型コロナウイルスの話題がメディアをにぎわせていますね。17~18年以上前のSARS、新型肺炎パンデミックを思い出します。
コロナウイルスは、ヒトや動物の間で感染症を引き起こすウイルスです。風邪症状を引き起こすHCoV-229E・HCoV-OC43・HCoV-NL63・HCoV-HKU1の4種類、深刻な呼吸器疾患SARSを引き起こすSARS-CoVとこれも重篤な呼吸器感染症であるMERS(中東呼吸器症候群)を引き起こすMERS-CoVの2種類と、これまで計6種類が知られていましたが、昨年12月以降、中国湖北省武漢市に居住する者を中心に新型コロナウイルス(nCoV)の患者が断続的に報告されて、7種類目のコロナウイルスとなりました。このウイルスの全塩基配列は既に、中国からWHOに提供されており、検査体制も整備されつつあります。先日、中国より「ヒトからヒトへの感染が確認された」という報告もありましたが、感染ルートの詳細はまだはっきりしていません。テレビのワイドショーなどでもこの話題が扱われていますので、不正確な情報や誤解が広がることも心配されます。鍼灸・柔整の臨床で、もしこのウイルスについて患者さんから聞かれることがあったなら、できるだけ正確な情報の提供に努めていただきたいと思います。国立国際医療研究センター国際感染症センターからのオフィシャルな情報が参考になるでしょう(http://dcc.ncgm.go.jp/)。
ところで、SARSのパンデミックの際には致死率が全体の9・6%、65歳以上で50%以上であったことを考えると、nCoVによる肺炎はこの原稿の執筆時点で3名の死亡者が出ているものの、どうやらSARSほどの致死率ではなさそうです。それでも、日本での流行が懸念されます。予防方法は他の風邪予防と同様で、手洗い、うがい、咳エチケットなど。特に不特定多数の患者さんと接する機会の多い方は、スタンダードプレコーション(標準感染予防策)に努めてください。スタンダードプレコーションとは、全ての人が伝播する病原体を保有していると考えて行動することで、具体的には、①手洗い ②手袋 ③マスク・ゴーグルの着用 ④ガウンの着用 ⑤器具の洗浄等 ⑥リネンの洗浄等が挙げられます。これら全てを実行するのは難しいかもしれませんが、「全ての人が感染源であり得る」という意識は、臨床家として普段から持っていていただきたいものです。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。
連載『柔道整復と超音波画像観察装置』178 足関節損傷時の超音波画像観察について
連載『柔道整復と超音波画像観察装置』178 足関節損傷時の超音波画像観察について
2020.01.24
鈴木 孝行(筋・骨格画像研究会)
30代の男性。柔道の練習中、畳に足をとられて右足関節が外返しになり受傷、その直後から足関節内側部に痛みが出現したため来院した。患部を診察したところ、自発痛、運動痛はもちろんのこと、内果部の腫脹や三角靭帯付近の圧痛が確認でき、外返しのストレステストで疼痛が増強、患側での荷重負荷も困難で、跛行が見られた。これらを踏まえると「三角靭帯損傷」と「脛骨下端部骨折」の二つの損傷の可能性が考えられたので、その判断のため、超音波画像観察装置で患部を観察することにした。
まず、健側(左足)画像中の組織の位置を確認する【画像①】。①は「脛骨下端部」、②の高エコーラインは「距骨」、③の帯状のラインが「三角靭帯」である。全体的に組織間の境界が明確になっている。患側(右足)の画像と健側の画像を比較するとまず確認できるのが、患側の脛骨下端部の黄色い線で囲んでいる箇所の不整画像である【画像②】。健側では、脛骨の高エコーラインが鮮明に描出されていたが、患側では骨折があるため、高エコーラインに侵入像が見られ、さらにその周囲には出血や炎症物質が滲出して、低エコー領域が増加しているのが認められた。また、三角靭帯の観察においては、健側と比較すると、高エコーのラインに低エコーが入り込んでいる不整画像が確認できた。これは、骨折における内出血として捉えられるが、靭帯損傷の疑いも考えられるので見極めが難しい所見である。
今回のような足関節周辺の損傷では、下端部骨折や靭帯損傷など判断に迷う症例が多々存在するので、見逃さぬようにしなければならない。多くの情報が得られる超音波画像観察装置を使用して健側と患側とを比較観察し、患者にも画像を確認してもらえれば、患部の客観的な説明が可能になる。これによってインフォームドコンセントをより明確に行うことができるので、骨折および軟部組織損傷に対する超音波画像観察の必要性は今後も高いと考えられる。
催し物案内 労働・雇用の「基本」をレクチャー
催し物案内 労働・雇用の「基本」をレクチャー
2020.01.24
―社労士と鍼灸師が学生や院経営者へ、東京で―
セミナー『学校では教わらない働き方の基本の“き”』が3月1日(日)11時から、『鍼灸院のための日本一カンタンな雇用の基本の“き”』が13時半から、東京医療福祉専門学校(東京都中央区)で開催される。
講師は、社労士の國安院ゆみ氏(社会保険労務士事務所FAILNAUGHT代表)と鍼灸師の米倉まな氏(まな鍼灸堂院長)が務める。午前の部では鍼灸学生や転職を希望する鍼灸師に向けて労働や社会保険の知識を、午後の部では開業鍼灸師や開業を考えている鍼灸師を対象に経営・雇用の基本をレクチャーする。詳細はホームページ(https://sq-koyou.jp/2019/12/30/hello-world/)。
(さらに…)
商品紹介 日進医療器『ユニコ らくらく灸』
商品紹介 日進医療器『ユニコ らくらく灸』
2020.01.24
―台座が大きく、一人でも簡単に扱える―
日進医療器株式会社(大阪市中央区)の、台座が大きいので一人でも簡単に扱える『ユニコ らくらく灸』。
「もぐさも大きいので1壮でも温灸効果が長持ちし、温熱の範囲が広いため正確な位置が分からなくてもツボを確実に刺激」と同社。設定温度49~53℃の「ソフト」、57~60℃の「レギュラー」(写真)、59~63℃の「ハード」の3種類。ソフトの燃焼時間は約6~7分で、ほか2種は約7~8分(温度・時間ともに室温約25℃の場合)。
製品に関する問合せは、同社窓口(0120-993-118)へ。
レポート YNSA(山元式新頭鍼療法)米国セミナー報告
レポート YNSA(山元式新頭鍼療法)米国セミナー報告
2020.01.24
―アメリカ西海岸「初」、盛況に―
我が校、鍼・統合医療バークレー専門職大学院(Acupuncture and Integrative Medicine College, Berkeley/カリフォルニア州バークレー市/理事長:後藤修司 学長&CEO:田中康夫)では昨年11月22日から24日までの3日間にわたり、山元式新頭鍼療法(YNSAR)のセミナーが開催されました。世界的な知名度を誇るYNSAですが、アメリカにおいては、2007年5月にハーバード大学大学院にて創始者の山元敏勝医師が招待講演をされて以来のことであり、また、アメリカ西海岸では初のYNSAセミナーということもあって、関係者の間で大きな反響を呼びました。フロリダ州や遠く日本からの参加者もいて、最終的には、受講生は当初の定員を大きく上回る25名となり、大盛況の中、熱心かつ真剣な技術指導が展開されました。
セミナー講師は、YNSA学会事務局長の冨田祥史先生。大阪の治療院より、はるばる駆けつけていただきました。時差調整に苦戦しながらの3日間のセミナー指導でしたが、関西スタイルの洒落も受講生に大いにウケ、笑いを交えた独自の技術指導は、アメリカ人受講生一同から絶大な評価を得ていました。セミナーが終了する前に、早くも来年度のセミナー開催への要望が数多く寄せられ、現在、その計画が進んでいます。
「薬理療法以外のケア」研修等、全米の病院で義務化
YNSAは、脳神経疾患やパーキンソン病及び、急性・慢性疼痛の症状緩和に顕著な効果をもたらすことで、世界レベルで広く知られています。疼痛治療の分野においては、アメリカでは疼痛緩和に使用されるオピオイドによる中毒死が相次ぎ、深刻な社会問題化していることは周知の通りです。本年度、トランプ大統領による緊急大統領令が発令され、オピオイド対策は医療界での緊急課題に指定されました。また、「薬理療法以外の疼痛ケア」については、全米の各病院で、研修・勉強会が連邦レベルで義務化されており、当校の講師も、カリフォルニア州立サンフランシスコ大学付属小児病院(UCSF Benioff Children’s Hospital)からの要請を受け、同病院のレジデント(研修医)を対象とした鍼による痛み治療について講義を行っています。
このような大きなトレンドの中、さらには、メインストリーム医療への参画という大きな課題の達成に向けて、今回の冨田先生によるアメリカ西海岸初となったYNSAセミナーは、アメリカにおける慢性疼痛の治療において、とても重要な「一石」、そして「起爆剤」になることでしょう。(AIMC学長&CEO 田中康夫)
Q&A『上田がお答えいたします』 支給済み療養費の返納事務について思うこと
Q&A『上田がお答えいたします』 支給済み療養費の返納事務について思うこと
2020.01.24
Q.
療養費の請求業務も行う施術者団体の者です。先日、支給済みの療養費について、保険者から返納を求める文書が届きました。これには応じなければならないのでしょうか。
A.
最近、支給されてから相当の時間が経過した後になって「療養費を返納してほしい」と求められるケースが多くなってきましたね。まずは、その理由が正当なのかを確認する必要があります。それが妥当であるならば、求めに応じなければならないでしょう。不正請求が判明したのであれば、単に返納に応じるだけでは済まされません。個別指導や監査に発展し、最悪の場合、療養費の受領委任取扱いの中止措置を受けることになります。例えば自主返納を含めた監査の結果によっては、当局から施術管理者に直接返納の指導があるでしょう。また、単なる事務処理の誤りや勘違いの場合であれば、「実際に振り込んだ先が貴団体の口座なのだからそちらに返納を求める」と保険者が言うのは筋が通っています。一方で、保険者が「支給すべきではなかった」とした理由に会員及び施術者団体が納得できないのであれば、被保険者に相談した上で審査請求をすることができます。審査請求書の提出先は、協会けんぽや健保組合ならば管轄の地方厚生局に置かれる社会保険審査官、国保の場合は都道府県国民健康保険審査会、後期高齢者医療広域連合であれば都道府県後期高齢者医療審査会が審査請求担当窓口となります。
保険者は支給決定を行っており、これを「原処分」といいます。これを取り消すには、不支給決定通知書を発出する場合と同様に、その理由を明らかにした「支給済療養費取消決定通知書」を発出し、被保険者に対し、その旨を通知するべきです。またこの通知書では、これも不支給決定通知書と同じように、処分に不服がある場合には3カ月以内に審査請求ができる旨の「教示」をしなければならないでしょう。単なる返納を求める「ご案内」だけでは原処分に対する取消決定がなされていないことから、応じることは法的にできないと主張できるでしょう。そもそも、支給済療養費取消決定がなされたということは、療養費不支給決定という処分が必要となるのではないかとも思われますが、受領委任の取扱規程には支給済みの療養費の返納に係る具体的事務処理方法は明記されていません。また、求められた金額の全てを返納しなければならないのかどうかは、保険者と議論や交渉を重ねた方がよい場合があります。例えば、「保険者が長期間にわたり何の調査も確認も行わずただ支給を続けていた場合、本来支給すべきではなかったものを支払い続けてきたことに落ち度はないのか」「問題を放置した責任による按分負担や返納額の減額措置及び分割納付の考えはないのか」といった観点から、当然のことながら交渉の余地があると言えます。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
連載『食養生の物語』80 始まりと、終わり
連載『食養生の物語』80 始まりと、終わり
2020.01.24
あけましておめでとうございます。令和最初の新年を迎えましたね。いま一度、私なりに「令和」を解釈してみると、「れい」(数字のゼロ)の「わ」(足し算)。ゼロをどれだけ足しても変わらないように、表面を取り繕ってみても本質が明らかになってしまう時代になると言えそうです。
そして今年の干支は、庚子(かのえ・ね)です。「子」という字は、終わりを意味する「了」に、始まりの「一」と書きます。大きな流れでは、時代の終わりから始まりへの切り替わりであり、小さなところでは一日一日の始まりと終わりを意識すると良いように感じます。
食事でいえば、「いただきます」に始まり「ごちそうさま」で終わる。ちょっとした習慣ではありますが、日常の中で忘れがちかもしれません。日々の忙しさにかまけて、「エネルギー補給できれば」とか「お腹にさえ入れば」といった習慣が根付き、もはや食事が“食餌”と化しつつある人も少なくない中で、きちんとした食事を大切にしたいところです。「健康のことを考えれば、食事はよく噛むのが良い」といったことを、知識として知ってはいても、なかなか実践できていない人も多いのではないでしょうか。まずは「いただきます」と手を合わせ、最初の一口を口にしたら、一旦は箸を置いて味わう。その最初の一口が食事のリズムをつくるので、二口目以降も噛むことを意識できるようになります。
食養生といえば、とかく「何を食べるか」といった話題になりがちですが、このようにきちんとした食事法があっての養生です。食事の前に手を合わせ合掌することは、食べるものと自分自身とが合わさって一つになる行為を表わします。そうして栄養やエネルギーが身につくことを意識してみると、「ごちそうさまでした」と感謝の気持ちも沸いてきます。そして決まった時間に食事をすることで、一日のリズムも整ってくるようになります。
治療に際しても、「なかなかお通じがないから」と聞いていきなり便秘症を疑う前に、患者さんの生活リズムを尋ねてみる。適当なものを食べて済ませているのと、きちんと食事をしているのとで排泄のリズムが同じであるはずがありません。そこを抜きにして同じ治療をしても、それで同じ結果が出る方が、むしろ不自然であると言えます。
なにをどうやるかという方法論の前に、人としてどうあるかという姿勢を改めてみる。一日の始まりには、丁寧にお茶を入れて味わってみる。食事のときには始まりと終わりに手を合わせる。小さな習慣の積み重ねで、常に心を安定させていきたいところですね。今年も一年、よろしくお願いいたします。
【連載執筆者】
西下圭一(にしした・けいいち)
圭鍼灸院(兵庫県明石市)院長
鍼灸師
半世紀以上マクロビオティックの普及を続ける正食協会で自然医術講座の講師を務める。
連載『あはき師・絵本作家 かしはらたまみ やわらか東洋医学』15 「天地人」
連載『あはき師・絵本作家 かしはらたまみ やわらか東洋医学』15 「天地人」
2020.01.24
「天地人」は、上に天があり、下に地があり、その間に人がいることを表す言葉です。天は、その長さは測るまでもなくそれより広いものはないほど広く、地もまた、その大きさを測るまでもなくそれより大きいものはないほど大きいです。人は、息を吸って天の陽の気を、食べ物と飲み物から地の陰の気を取り込んでいるので、天と地との間でしか生きられません。
【連載執筆者】
かしはらたまみ
あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師
自身の子どもに東洋医学の概念を伝えるため「絵本」という表現を選択。色粘土を使った独自の手法で絵を描いている。これまでに『陰陽五行 まわるき』『おなかがいたくなるまえに』を自費出版し、ブログで『やわらか黄帝内経素問』も連載。絵本の購入はネット通販サイト・BASE「やわらか東洋医学」(https://touyouigaku.thebase.in/)から。
『ちょっと、おじゃまします』 ~「デイ骨(こつ)院」を提唱~ 大阪市生野区〈北川整骨院鍼灸院〉
『ちょっと、おじゃまします』 ~「デイ骨(こつ)院」を提唱~ 大阪市生野区〈北川整骨院鍼灸院〉
2020.01.24
できるだけ長く元気でいて、自宅で自立した生活を送りたい――そんな高齢者の願いをかなえて地域に貢献したい。北川肇先生は柔整と鍼灸だけでなく、主任ケアマネジャーと介護福祉士、社会福祉士の資格も取得。鍼灸整骨院と、入浴と食事は無く機能訓練に特化したデイサービスを運営し、ケアプランセンターも開設しています。 (さらに…)
今日の一冊 どこからが病気なの?
今日の一冊 どこからが病気なの?
2020.01.24
どこからが病気なの?
市原 真 著
ちくまプリマー新書 924円
病気と平気の線引きはどこにあるのかと問われた時、なんと答えるか。「線は引けない、病気であっても平気なことはあるから」という答えは医学的に正しい。けれど実際には、患者が知りたいのは「どんなサインが出たら病院に行けばいいのか」で、「医学でしかない」答えは不十分。病気とは何か、健康とは何か。病気と気持ちとの関係は――。SNSで「ヤンデル先生」として人気を博す病理医が、中高生読者を想定したレーベルのカラーに合わせ、平易な文体で病気と健康について解説。待合室で気軽に手に取れる一冊。
編集後記
編集後記
2020.01.24
▽先日NHKで放送された『歴史秘話ヒストリア』では、今年の大河ドラマの主役・明智光秀をクローズアップ。光秀には医術の心得があったといい、その口伝を書き留めたとされる『針薬方』という文書が紹介されました。『針薬方』は、2月9日まで熊本県立美術館で特別展示されているとのことです。ちなみに、再現ドラマの小道具として使われていた鍼は、医療パートを監修し、番組でコメントもされていた長野仁先生の私物だそうです。ところで、ここ1カ月で弊紙のHPにアップした速報記事のうち閲覧数が上位だったのが、上述の番組の紹介記事でした。やはり、皆さんご興味がおありのようですね。これも何かのきっかけ、大河はいつも初めの数回で挫折してるのですが、今年は最後まで観ようかな。(前)
福井・若狭の温泉で『美と健康の鍼灸展』、2月末まで
福井・若狭の温泉で『美と健康の鍼灸展』、2月末まで
2020.01.21
『美と健康の鍼灸展』が、福井県若狭町の温泉施設「みかた温泉きららの湯」で2月末まで開催されている。温泉の2階に入居している明治国際医療大学の付属施設、「きららの湯若狭鍼灸院」の開業1周年を記念して企画された。
鍼灸治療と適応疾患、使用する経穴や鍼灸の歴史、災害現場でも活躍している現状などについてパネル展示で分かりやすく解説、温泉客に鍼灸治療について知ってもらうのが狙い。
訃報 元日マ会会長、時任基清さん死去
訃報 元日マ会会長、時任基清さん死去
2020.01.15
日本あん摩マッサージ指圧師会の元会長、時任基清さん(ときとう・もときよ)が昨年12月18日、死去した。86歳だった。日本盲人会連合副会長や東京都盲人福祉協会副会長などを歴任。
時任さんは、新宿区立障害者福祉センターに自治体運営の施術室設置の働きかけなど、視覚障害者のあん摩マッサージ師の雇用改善に尽力された。
元IMJ名誉学会長の渥美和彦さん死去
人工心臓、レーザー医学、生体磁気などの研究を行った世界的な医用工学のパイオニア・渥美和彦さん(あつみ・かずひこ)が昨年12月31日、死去した。91歳。日本統合医療学会(IMJ)の創始者であり、名誉学会長だった。IMJによると、四十九日頃に「偲ぶ会」を予定しているという。
ケアマネ試験合格者、あはき70人・柔整107人
ケアマネ試験合格者、あはき70人・柔整107人
2020.01.14
厚労省のこのほどの発表によると、第22回(令和元年度)介護支援専門員(ケアマネジャー)実務研修受講試験の受験者数は30,509人で合格者数は5,644人、合格率18.5%だった(第21回の受験者数は49,332人、合格者数4,990人、合格率10.1 %)。合格者の職種別のうちあはき師は70人で構成比1.2%、柔整師107人で同1.9%。
なお、台風19号の影響で東北や関東をはじめとする13の都府県では試験が実施されていない。