奈良県橿原市 柔整療養費「相殺」裁判 来年3月、判決言い渡しへ
2019.12.25
―市が勝訴すれば受領委任のルールが覆る?―
奈良県橿原市における、柔道整復療養費に係る国民健康保険申請書の「過誤調整」をめぐる裁判で、12月12日に奈良地裁で口頭弁論が行われ、お互いの主張が出尽くし結審した。判決は令和2年3月12日、同地裁法廷において言い渡される。併せて、原告の補助参加人として、全国柔整師協会(全柔協)が裁判に参加することが認められた。
原告である橿原市内の患者らが市を提訴したのは昨年6月。訴状によれば、平成29年1月から3月にかけて原告らやその被扶養者が同市内の複数の施術所で受療した柔整施術に関する療養費が市から支払われていないという。市は、当該施術所の施術者が過去に申請し、既に支給済みの、原告らとは全く無関係の患者の療養費について、返戻額を患者ではなく施術者ごとに算出。これを原告らへの施術分の療養費から「過誤調整」の名目で相殺処理したものとみられている。
市は「原告らの療養費はすべて支払い済」と、原告らの訴えを全面否定。11月25日付の最終提出文書では、「保険適用施術であるか否かの施術の内容点検前に療養費を仮払いするという制度を運用した」と独自の解釈を述べたほか、「受領委任払い制度は、(中略)一番不利益を受ける可能性の高い者が保険者であることが明らかとなったから保険者に負担のかからない制度設計とする必要がある」などと主張し、争う姿勢を見せている。なお、原告側は12月11日付の提出文書で、これらの主張は被告が受領委任について全く理解していないことを露呈していると反論した。
ただ、仮に橿原市が勝訴するようなことになれば、受領委任のルールが覆り、全国的に不当な「相殺処理」が波及する恐れがある。本件に類似した「相殺処理」に関する裁判では、過去に大阪市が敗訴(平成29年3月28日判決確定)。当該裁判に関する資料も、原告側から奈良地裁に提供されている。