連載『織田聡の日本型統合医療“考”』94 お寺で「医師&薬剤師&鍼灸師」のコラボ企画をスタート!
2018.06.25
先日、長野県の伊那鍼灸師会の皆さんのご協力もあって、一般社団法人日本統合医療支援センターで、「お寺と医師と薬剤師と鍼灸師のコラボ企画」を開催しました。医師と薬剤師のWライセンスを持つ神戸大学名誉教授の平井みどり先生と私が医療講演を行い、木曽薬剤師会と伊那鍼灸師会の後援で、薬剤師と鍼灸師による健康相談や鍼灸の体験、自家製化粧水の体験などを行いました。僧籍も持つ私ができることとして、「空寺問題」と「医療介護の問題」を同時に解決すべく、コミュニティー再生の一環で始めた新たな試みです。
そもそもお寺は昔から、学校であり、病院であり、よろず相談所だったわけです。ところが、核家族化とともに地域コミュニティーが希薄化して、お寺も檀家さんとの関係が葬式・法事の時だけのお付き合いになってしまっています。最近では、お葬式はセレモニーセンターで行われるようになり、お寺のお堂は利用されなくなってきました。そこで、この広いお堂を活用しない手はありません。しかも、今回のような講話や講演にはもってこいの空間です。さらに、お寺には写経や瞑想、座禅といったヘルスケア、特にメンタルヘルスに有用なツールも揃っています。この場所とツールを利用して、地域のコミュニティー再生を行おうと画策しました。
会場となったお寺は、長野県の木曽福島にある臨済宗妙心寺派龍源山長福寺です。私の師匠である上沼雅龍和尚のご協力を得て実現しました。長福寺では毎年この時期に「やまぼうしを愛でる会」という催しを開き、音楽法話を行っています。この催しに、今回「医療」をテーマとした講演と体験を加える形での開催となりました。30名を超える檀家さんが参加され、平井先生の「薬」のお話と、私の「統合医療と健康情報」のお話とともに、薬剤師さんに日々の健康のご相談、鍼灸の体験もされていました。薬剤師業界も健康サポート薬局制度が始まりましたが、具体的に何を進めればよいのか分からないところが多いと聞きます。これを機に、薬剤師・鍼灸師とお寺の交流を生み、薬剤師の職域拡大や鍼灸の受療率の向上につながればと願っています。
なお、今回のイベントは宗教文化専門紙で120年の歴史がある『中外日報』で大きく取り上げられました。また、「同様のイベントを我が地元でも」と、興味を持たれている住職さんもおられるそうで、この試みが全国に広がっていくように、鍼灸師の先生方にもぜひご協力いただければと思っています。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。



