連載『織田聡の日本型統合医療“考”』106 厳しさ増す状況の医療を「成長する産業」へ
2018.12.25
先日、「施術所で不正広告横行」とのニュースが、また報じられていました。年内にも広告規制を見直して指針を作成するという内容でしたね。平成29年の通常国会で病院や診療所に関する広告規制の見直しを含む医療法改正法が成立し、今年6月1日に施行されたこともあり、今年は医療関係の広告、それも不正についてのニュースをよく目にしたように感じます。「無資格者は規制が弱くて、有資格者は厳しい」とよく言われますが、一概にそうとは言えません。たしかに不正広告の指摘を受けやすいのは有資格者側ですが、街を歩けば違法な看板があり、ネットを検索すれば違法なホームページを普通に見かけます。このような状況では規制はますます厳しくなっていくでしょう。資格の有無にかかわらず医療法を厳守し、医療広告ガイドラインに基づいて広告すべきだと思います。
ところで、鍼灸院などで保険診療が厳しい状況になってきているのは、同意書の問題だけではなくなりつつあります。私は6年前から無資格者との差別化をどう図るべきなのかということを訴え続けてきました。最近は、医療機関と連携を始めている無資格者もいます。有資格者の中には、無資格者に関連する記事や、その者が医師と連携しているといった記事を見て、「メディアや医師は無資格者と分かっていて載せているのか?」という話をされますが、背景には医師も「集患」が難しくなってきているという実態があるのです。そもそも「集患」という概念は存在しませんでした。ここ10年ほどで、医療機関も倒産件数が増え、公的病院や大学病院の赤字は日常化。「絶対受療数」が今後も増えても、採算が合わない医療機関がたくさん出てくることが予想されます。そんな中、成長しているのはリラクゼーション業やエステ業界です。サプリメントなども含め、ヘルスケアの業界は伸びています。結果として、勢いのあるところと連携する医療機関があっても不思議ではないのです。
つい先日も駅直結型クリニックを経営している知人の医師と話をした際、「日本国民は医療をタダだと思っているとでも思わないと経営できない」と言っていました。インターネットやEC(electronic commerce)が一般的になった現在、広告のあり方はもちろん、職務や資格制度、提供されるサービス内容、そして収益モデルを一から考え直さなければならない時期に来ていると思います。医療は社会の負の側面でありつづける限り、成長産業になるのは難しいです。成長する産業へと、鍼灸・柔整の業界だけでなく、医療界全体で変えていかなければなりません。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。



