連載『汗とウンコとオシッコと…』174 垂れる その二
2019.02.10
暖冬と言われてはいるが、寒さはやはり肌に滲みこむこの2月……。三寒四温で本格的な春の到来を待つ時期で日差しはやはり春の匂いが感じられる。通常は春に向けて肝が旺気するので、その表裏に足の少陽胆経の病症が現れやすい。膈上の血管が弛緩すれば、眩暈や耳鳴などが多く、膈上の血管が収縮すれば頭痛が多い。膈下の血管が弛緩すれば、少腹痛か、ぎっくり腰様の仙腸関節痛が現れ、膈下の血管が収縮すれば胸脇苦満や食欲不振を伴う胃煩が多い。自力運動の元の発汗や排便が有れば治りやすいのだが、発汗や排便がスムースにいかないと花粉症や皮膚炎のようなアレルギー反応が現れやすい季節とも言える……。
正月の過食傾向で身体に熱がこもり疑似末梢神経麻痺の症状が出て、川端に連れられて献血に行った森畑。だが、川端はぽっちゃり系なので少々血を抜いたところで粘りが無くなり元気にはなるが、ヒョロッとしたやせ型の森畑は川端のようにモノ、つまり水や栄養素を溜められる身体つきではない……彼の身体にとっての400㍉㍑の献血は、血球成分的には問題がないが、血漿成分が抜けることで脱水から疑似貧血様の症状が現れたのだ。普通はこれに陥ることは少ない。暴飲暴食の後だからこそ現れた症状というわけだ。血圧が下がって日動変化があまりなく、胃腸と肝臓の働きが悪くなり、食事が上手く入らなくなってしまった。そこで酒飲みの阿呆が何とかしようとした結果、大好きな酒を飲むと朝が起きれない状態に陥ったのだ。
「おっ、お前のせいや……。信じたおれが阿呆やった……」
「いっ、いや、いや、いや……拙者が復活したもんだから、森畑氏もイケると思って……。
けっ、献血から戻ってみれば、横転先生が、『森畑は酒で肝臓が疲れてるところに血が少なくなったから、血漿成分が立ち上がるひと月はかかるやろ』と言われて、そこで、よっ、ようやく、理由が分かった次第で……」
「胸がわさわさするし、頭が痛いし気持ち悪い……。ポジティブに考えて、女性の更年期症状や月経の疑似体験ができたとでも思うしかないか……これは、理屈が分かってないと不安になるわ。眼瞼下垂は無くなったけど、ちょっと痙攣する……」
「でっ、では、いつものように、横転先生の指示通り、胃の六華灸を……」
「お前の『ねちょ手』は艾が水分を含んで熱くなるから、気つけてくれよ……」
もはやため息交じりの森畑だ。胃の六華灸……食べられない状態の肝臓、すい臓、胃腸障害を、脾臓と肝臓と膵臓で血液分配してPHを調整するわけだ。
「あっつ! 気をつけろや!」
と、文句を言いながら灸を受ける森畑だった。
そこに、横転先生が煙草の紫煙をふかしながら入ってきた。
「おっ、やっとるやんけ。もうちょっとやな……眼瞼の下垂はましやろけど……。でも、朝のナニが垂れてる内はまだ復活せんぞ。ええ経験したやんけ。ハハハハハッ」
「くっ、何でもお見通しかよ。実際にあるから何も言えん……」
苦笑するしかない森畑だった。
【連載執筆者】
割石務文(わりいし・つとむ)
有限会社ビーウェル
鍼灸師
近畿大学商経学部経営学科卒。現在世界初、鍼灸治療と酵素風呂をマッチングさせた治療法を実践中。そのほか勉強会主宰、臨床指導。著書に『ハイブリッド難経』(六然社)。




