柔整療養費検討専門委員会 第10回会議 審査会強化、承認されるも課題残す
2017.02.25
2月15日、柔道整復療養費検討専門委員会の第10回会議が都内で開かれた。「平成29年度に実施を予定しているもの」として、事務局の厚労省により提示された柔整審査会の権限強化を含む「審査・指導監督」関連の改正案に議論が集中した。全委員の間で実施に向けた一応の合意は形成されたが、柔整審査会の組織上の不備等を指摘する声もあり、今後さらなる見直しの必要性が確認された。
審査体制に「利益相反」との指摘も
改正案には、柔整審査会について、▽「部位転がし」を審査項目に追加する、▽不正請求の疑いの強い施術所に資料提出や説明を求めることができる、▽必要に応じて施術所に通院の履歴が分かる資料の提示を求めることができる、といった権限強化策などが盛り込まれている。以前から業界側が主張してきた意見が強く反映された内容となった。
そんな中、今回、全国柔道整復師連合会(全整連)の田村公伸氏から、現状の柔整審査会の審査員構成に偏りがあるとの指摘が出た。田村氏は「保険者、学識経験者、施術者の各立場からなる三者構成で審査が実施されているが、例えば、保険者審査員に開業整形外科医が、学識経験者の審査員に元協会けんぽ職員が務めている場合があり、また施術者審査員は日整社団の者がほとんどを占めていると聞く」と述べた上で、厚労省に対し、審査員委嘱の不透明性の是正とともに、全国の審査員構成の実態を早急に調査するよう求めた。この発言後、すぐさま健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏から「自らの団体に所属する柔整師の申請書を見て、これは利益相反に当たらないのか」との疑問も呈された。
また、幸野氏は「月に1回しか開催されていない柔整審査会で、新たに施術所を調査するといった業務が課せられるが、現状の短い審査時間でそれらも実施できるのか」と指摘し、開催頻度を週1回に増やすなど柔整審査会の体制自体を抜本的に見直さなければ、権限強化策を盛り込んだ今回の改正案の効果は見込めないと主張した。これらを受け、伊藤宣人氏(日本柔道整復師会理事)は「日整の審査員は、日整所属以外の柔整師の申請書を審査しているところも中にはある」と反論。厚労省は、柔整審査会の審査員構成の調査について、まず実施するのか否かを検討し、実施した場合は今後の専門委員会で報告すると回答した。
議論の終盤、座長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部教授)が、過去の専門委員会でも多くの時間を割き、厚労省も「平成29年度に実施を予定しているもの」と位置付けて具体案を示しているとの理由から、改正案の決議を行った。柔整審査会の権限強化を図る点には業界側、保険者側とも了承し、一応の合意は形成されたが、幸野氏が「今回の権限強化策だけで審査が強化されたと考えるのは大間違いで、柔整審査会の体制の見直しがまだまだ必要だ」と引き続きの審議を求めた。
なお、前述の田村氏の発言に対して、日本柔道整復師会保険部長の三橋裕之氏から「その発言は全整連としての発言か」との質問が上がり、田村氏が「個人的な意見」と回答し、また全整連会長の田中威勢夫氏が「田村氏の発言は全整連の立場からではない」と発言するといった場面があり、業界側委員間で意見集約が徹底されていない面が表出する一幕が見られた。
このほか、施術管理者の要件追加や亜急性の解釈などが議論され、また、「不適切な広告」の是正について、全国調査を実施するよう厚労省に複数の委員から要望があった。