「令和」始まる――柔整・あはき業界の「総意」求めて
2019.05.25
「令和」の時代が幕を開けた。改元を挟んだ10連休を休業日とし、英気を養った柔整師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の先生も少なくなかっただろう。長い休みの間に通院中の患者さんの状態が頭をかすめた施術者はいただろうが、「新時代」を迎え、業界に何かを期待したり、希望に胸をふくらませたりした者はどれくらいいたのだろうか。
柔整・あはき業界の平成は、「規制緩和とそれに伴う功罪が明らかになった」時代といえる。平成10年の福岡地裁判決で柔整・鍼灸養成施設の設置が認められ、数多くの専門学校・大学が誕生し、多い時で毎年4、5千人超の柔整師と鍼灸師を輩出した。療養費でも、柔整の全国47社団法人しか取り扱えなかった受領委任が平成目前の昭和63年に全ての柔整師に解禁され、あはきでも平成16年の千葉高裁判決によって代理受領が実質的に容認されるなど、その後の100は優に超える施術者団体の増加や、療養費の取扱い高の増加につながった。これらは業界の規模拡大に大きく貢献したが、同時に成長による功罪の「罪」の部分も次第に表出してきた。過当競争によって養成施設の中に「夜間部で週3回通学」といった最低限の単位数で卒業させるところも現れ、施術者の「質」が問われた。療養費においては、不正請求が新聞・テレビ等で頻繁に報じられ、社会問題として捉えられている。つまり、目が行き届かない部分を業界内のあちこちに作ってしまったのだ。
平成も終わりが近づき、国が新教育カリキュラムで改善を図ったり、療養費では適正化の名の下に不正対策を講じたりと手を打った。業界側でも、卒後研修の向上や業団自らが「療養費適正化」を掲げるなど自浄作用を働かせようとした。ただ、信頼回復とまでは至っておらず、何よりもこの動きをどれだけの柔整師・あはき師が知っているのかが疑問だ。情報を求めない施術者個々の問題もあるが、業界中に数多くの公益団体が存在しながら、情報公開の考えが浸透しないことの方が問題といえる。業権拡大のために行政との難しい交渉・折衝に当たる先生方には深く敬意を表すが、その取り組みを業界全体に広く伝えることの「責」を今一度考えていただきたいと思う。もし「その役目の一端を業界紙に」と考えていただければ、本紙としても役割が果たせるというものだ。
今号掲載した「柔整師団体へのアンケート」では、今後の業界の課題として「団体間の連携」を選んだ団体が最も多かった。柔整・あはき業界とも、「中央団体」と称される団体の組織率は低下を続けている。現時点での業界の「総意」とは何か。情報公開し、それに対する業界内の意見を吸い上げ、調整する……つまるところ、「腹を割った話し合い」なのかもしれない。
教育者・新島襄(同志社創立者)の言葉に「真理は寒梅の似(ごとし)、敢えて風雪を侵して開く」がある。梅は苦難を冒してでも咲くという意で、万葉集の「梅の花の歌」の一節から取られた「令和」の柔整・あはき業界の歩みと重なることを切に願う。