JATI第12回研修会 腰部のトレーニング法を指南
2018.07.10
特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会(JATI)の第12回研修会が6月3日、帝京平成大学中野キャンパス(東京都中野区)で開催された。
国際講演は、スピードスケート日本代表のストレングスコーチを務めたヨロン・リートヴェルト氏が講師に招かれた。トップレベルのアスリートの場合、0.01秒の差が「金と銀の違い」になることもあるため、選手のデータの変化にたとえ統計学的有意差が無くてもコーチやトレーナーにとっては意味があるデータとなると指摘。日頃からわずかなコンディションの変化も見逃さず、トレーニングの強度の「上げ時」「下げ時」を見極めて、効率的なトレーニングを行っていると述べた。
理学療法士で日本大学文理学部体育学科准教授の小山貴之氏は『腰痛と腰部トレーニング―マクギルのビッグ3エクササイズ』をテーマに講演を行った。シットアップエクササイズ、いわゆる「上体起こし」は腰部、特に椎間板に対して過剰な負荷を加えると指摘。シットアップ中の脊椎に加わる圧縮負荷は米国の国立労働安全衛生研究所の提示する処置限界の3300N(ニュートン)と同等であると説明し、健康目的でシットアップを行うことは推奨できないと述べた。腰部トレーニングの実施に際して知っておくべき事項として、腰部損傷のモデルや体幹の安定性、種々のエクササイズで腰部にかかる負荷などについて概説。腰痛研究の権威と称されるスチュアート・マクギル博士が考案した腰部のエクササイズ法「カールアップ」「バードドッグ」「サイドブリッジ」を紹介し、実施方法や注意点を解説した。
スポーツ事故の判例なども
JATI顧問弁護士の片岡圭太氏(涼風法律事務所)が『スポーツ指導者と安全配慮義務―裁判例を中心とした考察』と題して登壇。スポーツ指導者と指導を受ける者との間には何らかの契約関係があり、指導者にも労働契約における使用者と同様の「安全配慮義務」があると指摘。柔道部の合宿に参加した女子高生が重篤な急性硬膜下出血を発症して植物状態となった事故や、高校のサッカーの試合中に落雷によって生徒が負傷した事故などで、部の顧問や引率した教諭に安全配慮義務違反が認められた判例を紹介した。
ほかに、基調講演『2020東京オリパラのレガシーとしてのスポーツパフォーマンス研究の提案』(福永哲夫氏・鹿屋体育大学名誉教授)、『メダリストに学ぶスポーツ栄養学―スピードスケート髙木美帆選手の食改善』(村野あずさ氏・株式会社明治)などが行われた。