講演会『ドイツの鍼灸事情と実技』、森ノ宮で
2018.11.10
―独療法士、自身の判断で開業・施術 保険適用の厳しさも―
ドイツで日本式鍼灸による治療を実践するドイツ人鍼灸師、Jene-Peter Salzmann氏(塩人ザルツマン鍼灸院院長)による講演会が10月5日、森ノ宮医療学園専門学校(大阪市東成区)で開催された。同氏は毎年日本に研修旅行に訪れているといい、今回の来日に合わせて講師に招かれた。ドイツの鍼灸事情について紹介したほか、接触鍼や刺鍼の実技も披露した。
同氏によれば、ドイツでは1930年代頃から鍼灸治療が盛んとなった。現在は医師のほかに、療法士国家試験に合格した療法士(ハイルプラクティカー)が、鍼灸を含む補完代替医療を自主的に行うことができる。看護師や介護士といった医療従事者も医師の指導下でなら施術ができるほか、助産師は鍼治療の研修を受けることで自主的な施術も可能だとされた。また、療法士は医師の指導を仰がず、自己の判断のみで施術でき、開業も許されているという。療法士は現在24,000人で、治療は全額自費が一般的。ただし、ドイツの医学界においては、一般に鍼灸治療は科学的な治療とは考えられていないものの、実際に鍼灸治療に携わっているのは療法士よりも医師がはるかに多いとして、東洋医学への潜在的な期待の大きさを示唆した。
一方で、保険適用については厳しい状況で、製薬会社と健康保険会社の意向が影響した治験の結果、収入が低い等の理由で義務健康保険にしか入っていない大半の国民は、鍼灸治療を自費で受けなければならないとした。なお、ドイツにおける鍼灸施術は中国式がほとんどだと説明。その中で日本鍼灸を愛用している理由については、「体質的に優しい刺激の方が合っている人がいるのはドイツ人も同じです」と語った。




