JISRAM第2回公開講座 鍼刺激による精液所見の改善など
2019.05.25
『男性不妊のAtoZ』テーマに
一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)の第2回公開講座が3月24日、京都市内で開催された。テーマは『男性不妊のAtoZ』。
昨年、男性学・雄性学の権威的な学会である日本アンドロロジー学会で「鍼刺激による精液所見の改善」について研究発表を行った伊佐治景悠氏(SR鍼灸烏丸院長)が登壇した。仙骨部(副交感神経領域)への鍼刺激が交感神経を介して前立腺機能を高め、精液の液状化を促進するPSA(前立腺特異抗原)の精漿中の濃度を上昇させて精子運動を活性化させることが明らかになったと解説。また、鼠径部(交感神経領域)への鍼通電刺激により精巣の血液循環が改善されて造精機能が高まり、精子の数と運動率が上昇すると考えられると述べた。これらの治療法は男性不妊に有用であると示唆されるが、不妊治療中の継続が肝要ではないかとも話していた。
JISRAM会長の中村一徳氏は現在、男性不妊の症例集積にも取り組んでいると説明。一般の産婦人科でも使われている位相差顕微鏡と、精子数の迅速かつ正確な計算及び運動性評価が行えるマクラー精子カウントチャンバーを使用していると述べた。症例の一つとして、鍼灸・レーザー併用治療によって精子の総数800万が6125万に、総運動数144万が1378万に改善するなどして、顕微授精しか選択肢が無いとされていたにもかかわらず人工授精での妊娠にまで至ったケースを紹介。ほかに、精液量が極めて少なかった患者や、病気入院で無精子症になったといった患者の例を挙げ、「顕微鏡導入後1年半にして実に様々な症例に遭遇した。今後も治療と効果の因果関係を探り、検証を行って治療法を確立したい」と語った。
JISRAMの研究グループ「おたまじゃくしの会」のメンバーらは、スマートフォンの動画撮影機能を利用して簡便に精子を観察できるキットを用い、鍼治療の効果を検証したと述べた。経穴は解剖学的に精巣が近いことや経験則的な生殖器への効果などを鑑みた上で、自分で刺鍼できる箇所として足五里を選択し、キットは「TENGAメンズルーペ」を採用。刺鍼後、動きが悪かった精子が活発になった、精子の数が増えた、といった例が見られたとして、それらの動画を提示した。
このほか、島田昌之氏(広島大学教授)による『精巣、精嚢腺と精子の酸化ストレス―それぞれの誘導因子と妊孕力との関係』、井上正康氏(健康科学研究所所長)の『はるかなる命の旅―現代の生殖医療と21世紀病の逆襲』が行われた。