【特別企画・対談】男性・女性の生殖鍼灸・後編
2018.09.10
鍼灸・レーザー併用の女性不妊鍼灸のトップランナー・中村一徳氏と男性不妊鍼灸の研究で一躍注目を集めた鍼灸師・伊佐治景悠氏の対談、第二弾。前回は医師らが主導する学会での研究発表への道のりと不妊鍼灸の誤った広がり方への危惧を語り、今回は生殖鍼灸の今後を展望した――。
再現性高い生殖鍼灸に
中村 伊佐治先生が(前回最後に)おっしゃったように、不妊と一口に言っても原因は本当に多岐にわたります。腰痛といっても様々な原因があるのと同じで、十把一絡げに不妊を考えることが、そもそもの誤りなのです。
まず何が原因で妊娠しにくいのか、鍼灸の適応かどうかを問診や検査結果を通して推測せねばなりません。そのためには、相当の医学知識が要求されます。そして、適応ならばそれに効果的な方法を選択すべきです。
ところが、その方法が正しい検証を経ているかどうか、甚だ疑わしいものが巷にはあふれています。
伊佐治 私も、医学知識に基づいて患者さんの症状ごとに的確な判断をすることが重要だと考えています。
また、一般的には鍼灸治療と一括りにされますが、施術を行う先生によって治療法が異なるため、鍼灸に理解のある医師からも「周辺の鍼灸院には患者さんを紹介できない」とよく言われます。
中村先生主宰のJISRAMでは、効果が検証された治療法を会員の先生方が共有することで、会員の院であればどこでも再現性のある有効な治療が受けられます。これこそ、鍼灸が認められつつある今まさに最も必要な取り組みでしょう。
中村 他の分野でも、鍼灸が諸種の疾患の適応に医師側から認められない理由として「施術者によって治療が異なるため」という文言に出くわします。やはり、感覚に頼らずとも効果を再現できる手技手法の研究と開発は必要でしょう。
症状を自覚できるものはその変化により患者さんの選択が働きますが、生殖鍼灸は効果の自覚が無く、そういった選択がうまく機能しません。生殖鍼灸には、より高い再現性が求められるのです。JISRAMは「生殖鍼灸標準化機関」ですが、生殖医療の専門家から正当な評価を受けるように研究や啓発活動をしています。
今、生殖に限らず、運動器疾患を除く領域でも「鍼灸のスタンダード」と言えるような形が望まれていると思います。それは医師側からだけでなく、一般の受療者からも求められていることです。女性への生殖鍼灸は、徐々にそのエビデンスを備えつつあります。男性不妊に対する生殖鍼灸はまさに黎明期であり、今出た芽を上手に育てて、普及啓発を図らないといけないでしょう。
伊佐治 中村先生が提言されているように、生殖鍼灸は患者さんに効果の自覚が無いからこそ、再現性のある治療をする必要があると思います。
男性不妊の研究は始まったばかりですが、有効的な治療法が少しずつ確立されてきています。その普及の一環として、来年3月のJISRAM公開講座で講演させていただくことになりました。世の男性の精液所見は低下の一途をたどっており、今後男性不妊症で鍼灸院を受診される患者さんは増加すると予想されます。ぜひとも多くの鍼灸師の方に聴講していただきたいです。
男性不妊でも「鍼灸のスタンダード」を確立していくことで、西洋医学では治療法が乏しいこの領域で鍼灸が大きな存在となれるのではないでしょうか。
不妊で確立した理論、他の疾患にも
中村 私は鍼灸を医師に説明するのに、東洋医学用語は一切使わずに、全て共通言語で話します。細胞生物学、組織学、免疫学などについて様々な書物や各種論文にあたり、矛盾が生じないように理論構築をします。
そしてそれが得られたデータと整合性を取れれば良いわけですが、時にデータから理論にフィードバックされる場合もあるのがとてもおもしろいですね。理論とデータのクロストークです。また採卵成績の向上と着床率の上昇ですが、これは不妊に限らず、様々な領域で利用できる汎用性を持った理論ですので、今後は異なる疾患でもデータを取りたいと考えています。不妊治療をきっかけに、夢は膨らむばかりです。
伊佐治 最後は生殖鍼灸の枠を超えた話になってしまいましたが、鍼灸の標準治療を構築していくことが今後益々重要になると思います。私も生殖領域でその一端を担えるよう尽力したいと思います。
中村一徳氏:京都なかむら第二針療所・滋賀草津栗東鍼灸院総院長、一般社団法人JISRAM代表理事
伊佐治景悠氏:平成30年明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科博士課程修了、同年SR鍼灸烏丸開院