日本東方医学会の第36回学術大会 「医鍼薬地域連携」の現状報告
2019.02.25
連携できる鍼灸師養成、モデルケースを
一般財団法人東方医療振興財団主催の第36回日本東方医学会が2月3日、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都千代田区)で開催された。メインテーマは、『東方医学における地域連携の可能性』。
大会会頭の赤羽峰明氏(乃木坂あか羽鍼灸院院長)による講演では、同学会が推進する「医鍼薬地域連携」(医師と鍼灸師と薬剤師の連携)の取り組みやその経緯が語られた。契機は、同財団の上馬塲和夫理事長や高橋博樹理事、長瀬眞彦理事(いずれも医師)、原山建郎評議員(健康ジャーナリスト)らによる「町の開業鍼灸師を活躍させるため、もっと医師や薬剤師と連携を図っていこう」との提案で、2017年10月より、月1、2回のペースで研究会を開き、連携を妨げている課題等を探ったと説明。中でも障害となっているのが、鍼灸師が開業や治療院のスタッフとして働くことが多い現状では、医師を中心とする総合的な医療チームとの交流や相互研鑚の機会がない上、地域医療の傘の外に置かれている点だと指摘した。その後、計9回の研究会を踏まえ、昨年12月から医療連携ができる鍼灸師を養成する講座を立ち上げ、講座内容には、▽医療倫理・医療接遇、▽混合診療に関する基礎知識、▽紹介状・同意書・礼状等のやりとりの仕方、▽一般的な薬や各種検査法等の基礎知識、といった鍼灸師が養成校で十分学び得ない項目を盛り込んだと話した。また、医師会員がいる同学会の人的資源も活用しつつ、職種間の情報共有では「お薬手帳」の機能に鍼灸の施術内容(養生指導も含めた)の項目を加えた「医鍼薬手帳」を用いて、患者の状態を時系列で追える方法を取り入れる予定だと述べた。赤羽氏は、医師側には既に連携のノウハウがあり、鍼灸師側の準備さえできれば連携も図れるとし、モデルケースとなる事例をまず作りたいと語った。
連携実践する医師・鍼灸師によるシンポ
シンポジウム『医療現場における鍼灸活用の実際』では、医師の高橋秀則氏(袖ヶ浦さつき台病院麻酔科)、長谷川尚哉氏(大磯治療院・ほんあつ治療院総院長)、精神科医の奥平智之氏(山口病院精神科部長)の3名が登壇。高橋氏は、在宅ターミナルケアの現場でしばしば痛みが取れない患者に直面していた折に中澤弘氏(元アメリカ医師鍼灸学会会長)の難治性疼痛への鍼に出会い、鍼治療を学び、10年以上前から連携を実践していると述べた。連携を目指す鍼灸師には、自らの施術をオープンにして、患者のみならず医療関係者にもフィードバックを求めていくべきだと提起した。長谷川氏は、病鍼連携連絡協議会の代表として、地域の鍼灸院と病院の連携構築に向けた取り組みを2015年より行っていると説明。鍼灸師が行う連携は、自費施術も含めた「半制度的医療」といえ、療養費の6疾患だけ治療できるというだけでは不十分で、医師への「御高診願い」による精査・指導・フォロー依頼なども求められると強調した。奥平氏は、「栄養精神医学」を切り口に連携は図れると提案。医師の多くは、患者に栄養学的な指導までできないのが現状で、血液検査の結果を薬剤師や鍼灸師も共有することで、未病など様々な不調を見抜ける手助けとなると話した。
このほか、路京華氏(中国中医科学院広安門病院)による教育講演『蔵象学の現代訳』、一般口演11題などが行われた。