『ちょっと、おじゃまします』パーキンソン病のトレーニングを患者さんと研究 東京都杉並区<ガンコジン鍼灸院>

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投稿日:2025.12.11

インタビューあはき

 約30年間ボイストレーニングに関わった経験と、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師の知識と技術でパーキンソン病(PD)の呼吸、嚥下、発声などの障害予防と改善を目指しているのは岩﨑真樹先生。患者さんとの情報交換や、トレーニングのトライ&エラー、医師からのアドバイスももらいながら、効果的な改善方法を模索しています。

ツボを使うマッサージはトレーニングをスムーズにする

岩﨑真樹先生。ツボを使うマッサージはトレーニングをスムーズにする

 かつては呼吸法や発声法を教えるスタジオで働いていた岩﨑先生。いい声を出すためには体作りが大事と考え、「人体の知識とマッサージ技術を身に付けて、体のメンテナンスと併せて発声を教えられるようになりたい」との思いで養成校に入学しました。

 学校に通いながらも、芸能、健康と様々な目的の呼吸や発声のレッスンを行ううちに、岩﨑先生はPDのトレーニングに活路を見出します。PDは経過とともに固縮が進み、声は小さく、動きも小さく、表情も硬くなってしまう。ならば、呼吸と発声、鍼灸とマッサージによるサポートで心身共に活性化できれば、進行を遅らせられるのではないかと考えました。そこで担任教員に「PDに詳しい先生を紹介してほしい」と頼み、卒後は金井正博先生(鍼灸整骨木更津杏林堂)に師事。PDに対する鍼灸を学びます。さらにPDに関する学会に参加したり、鎌ケ谷総合病院脳神経内科・神経難病センターの湯浅龍彦先生(同センター長)の下でも勉強を始めたりと知識を深め、7年後にガンコジン鍼灸院を開業しました。

鍼灸×呼吸・発声でPDの進行を遅らせたい

 岩﨑先生がみている3割ほどはパーキンソン病の患者さん。他には、ナレーターや役者、歌手など声を生業とする人と、いろんな人から相談を受けます。

 特にPDの患者さんにおいては、主に鍼灸と呼吸・発声を組み合わせ、症状の改善を目指しています。鍼灸・マッサージで全身を整えたら、仕上げに呼吸・発声のトレーニング。呼吸の練習「呼気鍛錬」では、「気」の流れの大元である丹田を意識して呼吸を行います。発声では、体に響かせることを意識して母音を発声したり、早口言葉を練習したり。呼吸や発声にも東洋医学の「気」に似た概念があると岩﨑先生。体の中心を通る呼吸を意識してエネルギーを内から外に向かわせるように発声できると、声は美しく体に共鳴し、心にも体にもいい影響をもたらすそう。さらに体の動きを加えると相乗効果でエネルギーや筋の強化、脳の活性化が望めると考えています。

体の相談、発声の相談といろんな人が訪れる鍼灸院

体の相談、発声の相談といろんな人が訪れる鍼灸院

訪問の際の道具の一例

訪問の際の道具の一例

 また、鍼灸師の研究会で発声のデモンストレーションをしたことをきっかけに、全国パーキンソン友の会から講師を依頼されます。対面のレッスンは、COVID-19を機に冊子の制作や動画の共有をして、オンラインに。今では、「ゆるりサロン」、「呼気鍛錬クラス」など毎週複数のレッスンを実施し、画面越しに顔なじみになっていく仲間と、声を掛け合い和やかにトレーニングに取り組んでいます。この活動はPDを患者さんと一緒に勉強し改善策を模索するという主旨もあり、新しいトレーニングの情報があると皆で試してみたり、困りごとを共有したりと研究の場にもなっています。

 「効果的なトレーニングだと提案しても、患者さんには難しい場合もある」と理想と現実のギャップを語る岩﨑先生。例えば、首の後ろに手を回し首のセルフマッサージから始めようとした時、「首下がり(PDの症状のひとつ)がひどくて出来ない」と言われ、首の前側を伸ばすストレッチから始めることになるなど、PDの事は患者さんに教えてもらうのが一番だと実感しています。

QRコードを付け、動画をみながら実践できるようにした「嚥下改善のセルフメニュー~発声を中心に~」

QRコードを付け、動画をみながら実践できるようにした。動画の一例はこちら『嚥下改善のセルフメニュー~発声を中心に~』

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インタビューあはき

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