福島県立医科大学会津医療センターの鈴木雅雄氏が、同センター付属研究所(漢方医学研究室)の教授に就任した。12月1日付。鍼灸師が公立医科大学で教授になったのは、富山大学教授の髙岡裕氏に次ぐ例で、鍼灸業界にとっては快挙といえる。
明治国際医療大学(旧明治鍼灸大)卒業後、京都大学大学院医学研究科ポスドク、明治鍼灸大学臨床鍼灸学講座准教授などを経て、2013年に同センター漢方医学研究室の准教授に就いた。慢性閉塞性肺疾患(COPD)を研究対象とし、2012年5月に鈴木氏を含む研究グループが「COPD患者の主訴である労作時呼吸困難に対して、鍼治療が有効であること」を世界で初めて実証し、その研究成果が世界的医学系臨床雑誌『JAMA Internal Medicine』に掲載された。
鈴木氏より教授就任の心境についてコメントをもらったので、以下に掲載する。
「当付属研究所の設立目的の一つとして、科学的にまだ不明な点が多い漢方領域(鍼灸・漢方薬)に対して、研究を行い、その成果を会津から世界に発信することがあります。特に私は臨床研究を重視しており、これまで培ってきた臨床データから質の高い科学的根拠を発信していきたいと考えています。
会津医療センターには2013年に赴任して7年になります。当初は臨床や研究が軌道に乗らず失敗の連続でしたが、年を追うごとに徐々に成果が見られるようになり、臨床面では各診療科からの依頼が増え、研究面では競争的研究費(政府の科学技術研究支援)の獲得などが続くようになりました。また、2014年から医療鍼灸師の育成にも乗り出し、鍼灸研修生の雇用を始めました(待遇:福島県准職員)。研修は前期2年間、後期3年間の計5年間で医療における鍼灸を学んでもらいます。
これらの成果の積み重なりが後押しとなって、今回、教授に就任するに至りました。もちろん、私の力よりも各教授陣と医療スタッフ(特に当研究所スタッフと鍼灸研修生)の指導と支援のお陰です。私が教授を拝命したことは、漢方医学のEBMの構築を飛躍させることが使命と考えています。大変な重責ですが、楽しみたいとも思っています」
※記事は2月16日付で修正。今回の就任に関して「過去に前例がないという」と報じた先の記事を訂正し、お詫びいたします。