東洋医学はなぜ効くのか―ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム
講談社ブルーバックス
1,210円(税込)
NHK『東洋医学ホントのチカラ』ディレクターの山本高穂氏と同番組にも出演する統合医療や補完代替医療の専門家・大野智氏(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)の共著『東洋医学はなぜ効くのか―ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』が発刊された。
執筆に踏み切ったのは、「テレビで紹介しきれなかった取材情報や世界中の最新研究を伝えて、多くの人に鍼灸と漢方薬の良さを広めたい」との思いから。番組での現地取材は日本だけでなく、アメリカ、メキシコ、イギリス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、南アフリカ、ウガンダ、と3大陸にまたがる9カ国にも及び、アメリカやイギリスにおいては東洋医学の認知度が高く研究も活発に行われていると実感したという。
書籍では、西洋医学的視点でみた東洋医学の解説から、根拠を示す臨床試験、最後にはツボ押しのセルフケアも収録する。
山本氏が鍼灸師に「ぜひご一読を!」と力を込めるのが第2章。『免疫機能を調節するメカニズム』では、足三里の免疫改善メカニズムの研究を皮切りに、鍼灸と免疫に関する取材を重ねた成果を盛り込んだ。『未来の医療を変える鍼灸の可能性』では、鍼通電の進化形ともいわれるtaVNS(経皮的耳介迷走神経刺激)について、免疫学者である村上正晃氏(北海道大学)の最新研究を紹介し、電気刺激に期待され始めている効果を伝える。
また、取材で特に印象深かったのは「刺さない鍼」だとも。「ざらざらしている?」と感じる程度の微細な樹脂製の突起のついたシールが、12人中11人の肩こりを改善した実験結果を目の当たりにし、皮膚の不思議に強く惹かれたという。なお、番組での実験結果をまとめた論文は、日本生理学会で入澤賞(優秀論文賞)を受賞している。
最新の科学的知見や東洋医学がこれからの医療を変える可能性を伝える、活躍中の治療家に読みごたえのある一冊になっている。